2014年6月議会 討論
◎請願第2号 現行の保育水準を維持・改善する「子ども・子育て支援新制度」の実現に関する請願
請願第2号 現行の保育水準を維持・改善する「子ども・子育て支援新制度」の実現に関する請願について、賛成討論します。
この請願は、来年度から本格施行されようとしている子ども・子育て支援新制度にかかわるものです。
国のスケジュールでは、市町村において条例制定や、子ども・子育て支援事業計画の策定を今年度の半ばまでに終えることとなっています。そこで、保護者をはじめ関係者が疑問や不安を抱いたまま新制度が実施されるということのないよう「子育てしやすさ日本一」を掲げる箕面市が、これまで築き上げてきた保育水準を、維持・改善するよう十分な議論と準備を求める、という趣旨になっています。そして請願事項として「保育の利用手続き、入所のしくみ、職員の配置基準等について、新制度においても箕面市の現行水準を後退させることなく維持し、改善するよう条例等に反映してください」というものです。
さて、文教常任委員会の議論では、待機児童解消を考えると現行水準の維持を最優先すべきでない、というような意見がありました。これについては、内閣府の子ども・子育て会議基準検討部会の今年4月23日付の資料、「子ども・子育て支援制度における『量的拡充』と『質の改善』について」のなかで、「量的拡充」と「質の改善」は二者択一の関係にあるものではなく、両者は車の両輪として取り組む必要。と記載されています。そして「例えば、『質の改善』と待機児童の解消等の『量的拡充』は密接に関連するものであるなど、と示しています。
さらに、「子ども・子そだて支援法においては、基本理念の1つとして第2条第2項に『子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものでなければならない』としており、『質の改善』に取り組む必要がある。」と記載されています。
ということで、国も、この新制度については、待機児童解消に向けて、量的拡充と質の改善を実現するために、1.1兆円の財源が必要であると推計し、消費税増収分から0,7兆円を充てる、という考えを示しています。しかし、量的拡充に必要な0.4兆円は優先的に確保されるものの、質の改善についての予算は必要額の半分以下しか確保できていないという見通しの、矛盾した状況になっています。これは、質の確保にこだわって声をあげていかねばならない要因のひとつであると考えています。
また、新制度では、保育所、認定こども園などの施設型給付の施設に加えて、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内・院内保育という地域型保育給付の事業が新たに制度化されました。
この地域型保育給付の事業の認可基準は、市町村が条例で定め、認可・指導監督を行うことになっています。これらは体系的に4分類されて、基準もそれぞれ異なり、複雑になりますので、請願者の保護者の方々が不安に思われる気持ちはとても理解できます。
多様な選択肢があること自体を否定するものでは決してありませんが、だからこそ、「親の経済状況や幼少期の生育環境によって格差が生じることがないなど、子どもの最善の利益を考慮し、幼児期の学校教育・保育のさらなる充実・向上を図るとともに、すべての子どもが尊重され、その育ちが等しく確実に保障されるよう取り組まれなければならない」という「子ども・子育て新システムの基本制度」の冒頭の理念を活きたものにしなければならないと考えます。どこの園に入園しても、一定水準以上の保育が等しく確保されるよう、箕面市には取り組んでいただきたいと願っています。
さらに、入所手続きや保育時間のあり方についてですが、これらも、子どもの視点から考えることが大切です。
現行制度では、「親の保育所入所・選択の権利」保障のために「市町村の保育実施責任義務」があり、希望するすべての子どもの入所認定や申請が一体的におこなわれています。認定内容もシンプルで、特別に支援を必要とする子どもの優先的入所も配慮されています。しかし、新しい制度では、この市町村の保育実施責任義務がなくなる部分があり、親が申請する「給付認定証」の交付を行うことになります。親はこの認定証を受けてから、園と直接契約を交わして、入所するという手続きをふまねばならず、入所決定手続きのあり方が懸念されています。
また乳幼児期の保育時間は子どもの生活リズム、体調、心身の状況の変化などを第一に考えて対応することが大切です。親や園にとって合理的であっても、子どもの心身の状況に沿った保育が実現できるかどうかについても、委員会では議論になっていました。
大妻女子大学の岡健教授は「新たな制度の施行により、保育の質の向上がうたわれています、しかし、保育の『質』とは何でしょうか。(省略して)保育では、成果の質だけではなく、プロセスの質が大事ということが長年いわれています。保育所保育指針および遅延教育概要も、「あいうえお」が読めたり書けたりできるような指導は認めていません。子どもたちは、遊びのなかで文字に親しんでいくうちに、結果的に読めたり、書けたりできるようになるのです。これが乳幼児期の学びです」と言われています。また、「地域と『一緒に取りくみ』をしてきた保育所が『選ぶ』という社会の流れに振り回されているのは残念なことです。今後、新たな保育制度の意味をどのように受け止め、目の前にいる親子にとって大事なことなに切り替えていくのか、そしてどのように仕組みや仕掛けをつくっていくのか。その議論が必要だと思います。」とも述べていられます。
このたびの請願は、大きく転換する新制度について、保護者の不安を払拭し、箕面市がこれまで積み重ねてきた保育の質について、維持し、向上させようという前向きな提案として受け止めています。
今後は、条例や事業計画のなかに、どれだけ理念やしっかりした基準を盛り込めるかで、箕面市の保育の質が大きく変わっていくと考えています。子育てしやすさ日本一」が名実ともに実現するよう、議会の姿勢を示すときであると考えます。
「子どもは社会の力であり、未来をつくる力」です。請願者である保護者のみなさまの思いを受けとめて、この議案に賛成いたします。
以上、討論といたします。
◎第62号議案 「指定管理者の指定の件」について
第62号議案 「指定管理者の指定の件」について、反対の立場で討論します。
この議案は、箕面市立障害者福祉センターささゆり園の指定管理者に、社会福祉法人あかつき福祉会を指定しようとするものです。
私が、賛成しかねる点の1点目は、この間の経過にみられる市の認識・判断に、矛盾がある点です。
そもそものこの間の経緯についてですが、ささゆり園の指定管理者の選定は、昨年2013年の8月に公募がおこなわれ、社会福祉法人あかつき福祉会の1法人のみの応募がありました。その後、選定作業に入る前に、あかつき福祉会の不適切な会計処理が判明したため、あかつき福祉会に対して改善通知を行うとともに、いったん公募選定は中止されました。
この時点で、市は「不適切な会計処理」であると認定しましたが、それが「経済的虐待行為」にあたるという認識ではありませんでした。虐待行為ではないが、「不適切な会計処理」をおこなった法人に対して、指定管理者としての条件を欠いている、という判断で、公募選定を中止されたのだと理解できます。言い換えると、この時点では、犯罪行為や悪質な虚偽の報告をおこなった、という認定がなされた訳ではなく、ただ「不適切な会計処理がおこなわれた」という理由で公募選定は中止されていたのです。
第1回定例会において、指定管理者の再公募を行うため、3月末日までの指定期間を7か月延長する議案が提案され、賛成多数で可決されました。
このとき、私は民生常任委員会の席上、あかつき福祉会が、虐待行為にあたる会計処理をおこなったにもかかわらず、市の関与もなく指定管理者として延長されるのは何故か。「不適切な会計処理」は、指定の取り消し要項のうちの「管理運営上、不適切な行為があったとき」に該当しないのか、と質疑したところ、市のご答弁は「該当しない」とのことでした。ところが、第2回定例会の委員会において、「不適切な会計処理が収束した日」を確認したところ、実質的には3月7日であり、会計処理上は5月末頃、という市のご答弁でした。また3月7日付で、市はあかつき福祉会の「不適切な会計処理」を「経済的虐待」と認定しています。
つまり、「指定管理者の指定の一部変更の件」が議案送付されたのは、2月18日なので、「不適切な会計処理」の最終決着がつく前です。まだ精査中であるにもかかわらず、昨年8月に指定管理者の公募選定を取りやめたときの評価や判断が、どうして変わったのか、理解に苦しみます。1月に監査が入り、その後、追加の未払工賃を発見し、確認作業をしていたのであろう時期にもかかわらず、極めて不可解です。これでは客観的にみて最初から「ありき」で進められていたように思えてしまいます。さらに、本議案に関する質疑において、「指定管理者の指定の取り消し要項にある不適切な会計処理」とは、犯罪行為や指定管理業務に関する悪質な虚偽の報告である、という説明でした。日が経つごとに、どんどんとハードルが低くなっています。
さて、2点目は、悪気のない「虐待行為」と、意図的な「虐待行為」とは、大幅に区別されるものなのか?という点についてです。ショートステイの身体拘束も、「悪気なく」その行為が虐待にあたるとは知らずにおこなわれたと聞き及んでいます。また経済的虐待は、工賃を返却すればそれで済まされるのでしょうか?就労支援事業の目的は「より多くの工賃を利用者に支払うこと」にあります。これは厚労省の手引書「Q&A」に明記されていますが、その意味で、市やあかつき福祉会がこれまで努力をしていたのかどうか、が問われていると考えています。授産事業時代からの会計報告を精査する限り、客観的にそのような努力の形跡をみることができません。障碍者の就労支援をどのように考えているのか、が問われているのではないでしょうか。
3点目は、市が指導・監督していくといわれている中身についてです。
これは第1回定例会の質疑や事前のヒアリング等で明らかになりましたが、まず、今年1月の市の監査は広域福祉がおこなったもので、何年かおきに行われるものです。今回は、たまたま、あかつき園でしたが、また来年も行われる、という類のものではありません。また「市の指導・監督」とは、市の職員が「職務を解いて」理事として参画する、という意味です。これは、従来からも行われており、それでも「不適切な会計処理」を未然に防ぐことはできませんでした。「職務を解いて」の参加なので、知りえた情報や資料を行政として保管・保有することができないため、市民や議会がチェックすることも叶いません。これでしっかり指導・監督するといわれても、かなり限界があるといえます。
4点目は、このような指定管理者に対する評価や扱いが、他の施設管理にも影響を及ぼす危険性がある点です。これは悪しき前例となってしまうでしょう。このたびの指定管理者の選定は法人を選定しているのであって、働いているスタッフや従業員がいくら素晴らしくても、法人の資質が大きく問われるべきでしょう。また、事業として、利用者に不便を与えることはできないため、事業の存続はもちろん大切ですが、けじめとして、一定の期間、行政が経過監察を行うなどの措置が適切ではないでしょうか。
なお市はあかつき園の不適切な会計処理はすべて終わった、との認識ですが、私は第1回定例会で指摘した問題について、しっかり精査すべきではないか、と考えています。この件については、現在も調査中ですので、また機会をみて指摘させていただくことも検討しています。
以上の点から、本議案についての反対討論といたします。
これは、厚労省の手引きQ&Aに明記されている。にもかかわらず、授産事業時代からも、また2010年の就労支援事業に移行してからも、その視点・姿勢はどうだったのか。あかつき福祉会も、行政も、その視点が欠落していたといえます。
市内には、障碍者の就労支援をおこなっているさまざまな事業所がありますが、たいていの事業所では、非常に厳しい財政状況のなかで、工賃捻出に悪戦苦闘されています。また、ともに働く健常者の給料も厳しい状態です。そういった状況を考え合わせると、工賃未払分は利用者に返金したらそれでおしまい、とはいかないですし、経済的虐待について3月7日時点で収束した問題であり、指定管理者の「指定の取り消し要件にも該当しない」という考え方は、箕面市に人権意識が問われることにもなります。
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