2012年5月議会 一般質問

●一般質問

外郭団体の雇いどめ事件をめぐる市の対応について

外郭団体の雇いどめ事件をめぐる市の対応について一般質問させていただきます。

6月8日に開催された民生常任委員会で、障害者事業団の雇いどめ事件が取り上げられました。私はこの質疑を聞いていて大変驚きました。なぜなら、そもそもこの事件についての事実経過が障害者事業団の臨時職員だったAさん側の主張と市及び事業団側の主張とは余りにも大きな隔たりがあったからです。そのことがかえってこの事件の問題性を浮かび上がらせたようにも思えます。

さて、5月16日付でAさんが雇いどめを受け入れられずに職場復帰をめざして加盟した労働組合から、市長と議会あてに要望書が送られてきています。大変ショッキングな内容であり、私は当事者Aさん、担当所管である箕面市の健康福祉部ほかをはじめ、Aさんとともに現場で働いていた先輩の臨時職員の方からそれぞれ事情を伺い、また、障害者事業団からも大変時間を割いていただき経過の説明をお聞きしました。

そして、総合すると、Aさんや同僚の臨時職員さんの証言と市及び障害者事業団とは事実の認識について多くの点で異なっている点が多いことがわかりました。

この事件は、障害者事業団が市から委託されているリサイクル事業において発生したものです。このリサイクル事業は、プロパー職員1名、臨時職員8名、後に1名追加されますが、障害者職員8名という人員体制がとられているとのことです。中程度から重度の障害を持つ職員さんを受け入れて、臨時職員の健常者とともに、ビン、カンなど資源ごみの選別や洗浄を行っています。リサイクルセンターが山手にあるため、事業団に集合して送迎車2台で通勤するという方法をとっておられます。毎週、毎月入荷した資源ごみのリサイクル処理は時間内に作業を終えているそうです。

2011年11月21日から半年間の雇用契約を結んだAさんは、事業団から翌年4月11日に契約継続をしないと告げられました。この6カ月の雇用契約後は労使間の合意で更新が可能であることが臨時職員雇用契約書に記されています。なので、事業団によると、過去6年間で59人のうち3人が雇いどめとなり、うち2人が初回での雇いどめ、そのうちの1名がこのリサイクル事業においてという説明でした。

先日の民生常任委員会での質疑では、1、組合の発行したビラには障害者職員からセクハラを受けたという記述があり、障害者への偏見を助長することにつながり人権侵害である。2、雇いどめは雇用期間が終了しただけで法的な違法性はない。3、Aさんの対応は障害者と一緒に当該作業を継続するには不適切であり、そのことが契約を更新しない理由である。4、雇いどめを通告したとき、Aさんは何も言わなかったという内容のやり取りが主なポイントであったと思います。

一方、Aさんや同僚の方のお話では、Aさんはたびたびセクハラ的行為を受けたことで、当該職員Bさんに対しては当初怖いという感情を持ったこと、しかし、ご本人に面と向かってその思いを口にしたことはないという点、また、事実経過では以下の点が決定的に異なっています。

Aさんとともに働く年配の臨時職員DさんやAさんのOJTだったEさん、その他の方々によるAさんへの働きかけが功を奏し、12月末ごろにはBさんがAさんにつきまとうという行為はかなり解消されたとのことです。その後、AさんはBさんの個性であると受けとめることや、Bさんに自分が好意があるという誤解を与えない工夫、例えば細かいことですが、お昼ご飯を食べるときにお茶を入れてあげるという行為などは行わないなど、周囲のアドバイスを受けながらBさんとのコミュニケーションのとり方について試行錯誤を重ねていったそうです。その後、職場の管理者からのAさんに対する注意や職場の同僚の方々と管理職とのやり取りなどがあったようです。

ここで、この詳細を述べる予定でしたが、余りにも複雑であり、また、匿名であっても個人が特定されてしまうのではという市のご指摘もいただいたため、詳細を述べることは控えさせていただきます。ただ、私の聞き取り調査では、Aさんが徐々にBさんの個性を理解し、努力を重ね、また、BさんもAさんが嫌がる行為は控えるなどお互いが双方への配慮を意識し、円滑なコミュニケーションを図るに至ったという経緯を伺っております。

2月の末から4月にかけて、Aさんは上司から特に注意喚起を受けることもなく平穏に仕事をされていたようですが、4月11日、Aさんは契約満了に伴い更新されないこと、すなわち雇いどめを通告されました。雇いどめ理由は、障害を持つ職員とのコミュニケーションを図る努力をしていないということであったようですが、Aさんにとっては青天のへきれきとも言うべきもので、即座に納得できない旨の意思表示を行ったというふうに伺っております。

一方、障害者事業団側は、民生常任委員会での質疑内容に加え、AさんのBさんに対する関わり方が改善しなかったことや組合の行動が理不尽であることなどについて強調されていました。どちらにも言い分があるでしょうし、どちらかが真実を語っていないのかもしれません。あるいは両者のボタンのかけ違いなのかもしれません。しかし、余りにも極端に事実や経過が異なっています。

障害者事業団がこれまで培ってきた蓄積や取り組みにはもちろん敬意を表しております。スタッフの方々は、これまでの相当な努力があって現在に至っているのだろうと思います。

さて、民生常任委員会の質疑では、障害者とともに働くためには柔軟性、寛容性、豊かな人間性という資質が必要であるという市の見解が示されていました。また、市はこれまでの経験、実績があり、プロ中のプロ、専門家と認識しているので、障害者事業団の判断は適切であったと述べられていました。実績は評価いたしますが、だから絶対に正しいという予断で物事を判断するのはいかがなものかと思います。私は、いかなるときでも公平・公正に調査し、特にこのたびのように双方の主張が全く食い違うケースで、しかも、内容が大変重大である場合は、それこそ丁寧に聞き取りを行い、まず事実がどうであったかを徹底的に調べるところから始めるべきではないかと考えます。

事業団にしても徹底した調査を行い、明らかにしたほうが説得力があると考えますが、現状では残念なことにAさんの評価を現場の一部の人からの聞き取りだけで判断しているようです。全く別の証言を行っている人たちがいるわけですから、その方たちの話も聞くのは当然だと思いますが、今のところその必要性は認めておられません。

私は、Aさんから事情を伺っているとき、偶然にもAさんとともに働く障害者職員さんとそのご家族に遭遇し、Aさんがとてもフレンドリーに温かく接しておられるところを目の当たりにいたしました。このAさんと職員さんとのやり取りを見ていて、一朝一夕では得られない信頼関係やまなざしから、Aさんの人格や感性が不適格印を押されるものとは到底思えませんでした。なので、市の見解には違和感を覚えてしまうのです。

なお、このAさんが5月に雇いどめになってから、障害者職員の方々が異口同音に「どうしてAさん、やめてしまったの。Aさんが来なくなって寂しい」と言われているそうです。もちろんBさんもその中のお一人であるとのことです。

また、この事件は今回の雇いどめという労使間の問題について違法性がないということで終始しておりますが、そもそも市の委託事業が非正規の不安定雇用で成り立っているということも見過ごせません。しかし、今回はまず質問を絞り、以下の要望に対する答弁を求めたいと思います。

私は、何よりも実態調査が必要だと考えます。もし仮にAさんが意識変革を行っていたのなら、雇いどめ理由がなくなります。現状では、Aさんは仕事、すなわち生きる糧を失っただけでなく、彼女の人格や尊厳が著しく傷つけられたままになっていることも見過ごせません。市は速やかに公平・公正で人権を大切にする観点からの調査の実施に向けて行動すべきかと思いますが、いかがでしょうか。

以上、市の真摯な答弁を求め、私の一般質問を終えます。 


       ◆再質問 

 ただいまのご答弁に対し、再質問いたします。

事実経過について、市と事業団側、Aさん側の主張がやはり極端に違うということが明確になったと思います。今回さまざまな方々から事情をお伺いする中で、立場や感覚が異なると見え方も違ってくるというのがよくわかりました。

さて、今回の大きな争点の一つは、セクハラの有無についてがポイントであるように思います。事業団や市は障害特性であり、セクハラはなかったという見解を示されています。仮にセクハラ行為がなかったのなら、確かに組合側の主張は非常に悪質であると言えますし、いずれにせよ、障害者への偏見が助長されないよう、ビラの書き方は配慮や工夫がなされるべきであったと私も思います。

しかし、組合戦術の評価はさておき、セクハラ的行為は皆無だったのでしょうか。リサイクルセンターの責任者であった職員さんは、ヒアリングさせていただいたときに、セクハラについては、「自分は男性なのでよくわからない」と正直な感想を述べておられました。

さて、Aさんは採用前や後に一緒に働く仲間であるところの障害者職員さんのそれぞれの特性や個性については、説明やアドバイスを受けておられませんでした。Aさんが嫌だ、怖いと感じた行為とは、走り寄ってくる、近寄る、後を追いかけられる、離れたところからじーっと見つめられる、待ち伏せされるというようなものであったと聞いています。これは複数の方々が証言されております。Bさんにとっては親愛の情を示されたのであろうと思いますが、Aさんには性的なハラスメントを受けているという自覚があり、また、これらの行為は当時、同時にだれかほかの同僚などにも同じように行われていたのではなかったため、つまりこれらの行為が当時はAさんだけに向けられていたために、Aさんはそれが市のご答弁にあったその方のコミュニケーションのとり方の特性であると理解できず、おびえていたそうです。

例えば健常者がこれらの行為を悪気なく行ったとしたら、どうでしょうか。男性側に悪気がなくても行為を受けた女性が嫌だと感じれば、それはセクハラ行為になるのではないでしょうか。ただいまの市のご答弁でセクハラ的行為がないと言い切っておられましたが、そのような見解は当事者女性に寄り添っているものではなく、障害者と接するときは何があっても我慢して当然、嫌だと思うほうがおかしいとも受け取れてしまいます。

私は、障害者の個性や特性を理解するとともに、障害者に対しても相手が嫌がることをしてはいけないということを丁寧に説明し、お互いが相手を思いやれる関係を構築すべきであると考えます。そのための説明や時間が設けられ、三者でじっくりと話し合われたのかということが大事なのではないでしょうか。

また、ただいまのご答弁では、Aさんの発言について複数の職員が確認していますとありましたが、まさしく他の複数の臨時職員さんは、Aさんが自己変革を遂げてBさんとコミュニケーションを築けるようになったと認めておられます。「敗者復活」が許されないのだとしたら、そのような硬直化した姿勢こそ改めるべきではないでしょうか。

今回、私はこのような取り組みについても調査をしていただき、今後に生かしていただけないものかと考えています。組合のビラやマイク街宣、団体交渉の報告だけですべてがわかるというのは余りにも乱暴です。その結果、行政は知的障害者への理解や啓発などの施策に力を入れる必要があるかもしれません。私は判事でも裁判官でもありませんので、何かを裁くのではなく、今回の問題はなぜ起こったのか、今後同じようなことが起こらないためにはどうすればいいのか、あるいは教訓となる課題はないのか、そのためにはまず実態の調査が不可欠であると考え提案させていただきました。さまざまな障害のある方々を理解し、共生のまちづくりを推進するためにも今回の問題を一つの機会であるととらえることはできないのでしょうか。

何度も申しますが、これまでの障害者事業団の取り組みや蓄積を否定するものではなく、関係者の皆さまのご努力には心から敬意を表します。これまでも大きな目標と格闘されてきたであろうからこそ、常にさまざまな課題があり、それを乗り越えてこられたのであろうと思います。常に諸問題はむしろ起きて当然と言えるかもしれません。その意味で、市は一方を断罪することで終わらせるのではなく、やはり解決のための調査に臨んでいただきたいと思います。

労使自立の原則とは、原則的に当事者間で解決を図るのが望ましいということです。また、個別労働関係紛争なので市は権限がないとのことですが、これは市の外郭団体であり、かつ市の委託事業の中で起こった事件です。市には大いに関係する事件でありますので、事実の認定ということではなく、実態の調査を行い、問題の所在が何なのか解決に向け市ができる範囲で行動していただきたいと思います。

なお、今回の事件をめぐり、Aさんも早く次の職場を探し、今度はそのような目に遭わないようにしたらいいという発言をされた職員さんがいらっしゃいました。この職員さんも悪意はなくおっしゃったものと解釈していますが、市職員の見識がこのようでは困ります。とかくジェンダーの視点は正しく理解されずに二の次になってしまうという経過があるのではないかと懸念いたします。

以上、今回はあえて言及しませんでしたが、聞き取り調査の過程で他の諸問題を訴えておられる方々の声を聞くことができました。労働の現場で課題があるのはむしろ当たり前であり、それらの課題の解決とどう向き合うのかが大切だと考えています。市が公平・公正で人権を大切にする視点から直視して取り組んでいただくことを再度要望いたしますが、きょうのところは同じお答えになるのかと思いますので、ご答弁は求めません。

最後に、私は議員としての職責において、私なりにこの問題を重く受けとめて覚悟を持ってこの場に臨んでおりますことを申し述べて、終わらせていただきます。


2012年5月議会報告へ戻る


閉じる

トップページへ戻る