2011年12月議会 討論
○請願
◎ 請願第1号 介護保険第5期事業計画策定にむけての請願
通告外ですが、「請願第1号 介護保険第5期事業計画策定にむけての請願」について、私も討論に参加させていただきたいと思います。
介護保険制度がはじまって11年が経過しました。2000年では高齢化率17.8%だったのが、10年後には22.5%となり、高齢者人口は2200万人から2870万人に、うち要介護認定者数は298万人から487万人へと増加しています。
介護保険制度は「介護の社会化」を進め、高齢者の生活を支える社会保険制度として、今や欠かせないものとなっています。しかし、改定のたびに制度は複雑になり、利用者にとっては分かりにくく、利用しにくい制度になってきているという側面があります。
とりわけ、この制度が発足して以来、見込みを超える利用で厳しくなった介護保険財政の打開策が検討され、現場ニーズの解決策よりも、国の財政出動をいかに抑制するかという視点からサービスの再構築が進められてきました。
また、介護保険が開始された2000年では、公費負担が50%のうち、内訳は、国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%という負担割合でした。しかし、2006年度の改定で負担割合は変更され、国の負担のうち5%は調整交付金となり、市町村の状況に応じて交付されることになりました。国の負担が軽減され、箕面市などは割りを食ったと言えます。
さらに介護報酬は2006年4月から、実質2.4%引き下げられ、事業所経営や介護労働者の生活を圧迫し、利用者にも影響を及ぼすところとなりました。
さて、介護保険制度について、被保険者のアンケートや、NPO団体などが行った電話相談からの声を分析すると、在宅介護の不安や施設介護の不満、介護保険制度対する不信感などがみえてきます。7段階になった認定区分により、要介護から要支援に引き下げられて生活援助の利用制限がかかり、自立のために必要な介護サービスが思うように使えないという問題も起こってきました。
また2009年度の報酬改定で、さまざまな加算制度が利用料のアップにつながり、介護保険で利用できる範囲が狭まるとか、経済的に利用を控えざるをえないというケースも問題になっています。
あるいは、介護保険制度について十分な周知がなされていないために制度の理解が得られないというケースもあります。
そして2012年度からの介護保険制度の改定では、さらに国の財政支出を抑えるために制度の見直しが盛り込まれています。
たとえば、訪問介護では、生活援助の時間区分を60分から45分に短縮する案が検討されています。いまでも時間が足りないという声があるのに、さらに15分短縮して、その分「より多くの利用者にサービス提供できる」と位置づけるなど、現場のニーズを無視していると言わざるをえません。これについては反対意見が相次いでいます。
また、ユニット型特養(介護老人福祉施設)の部屋代については、多床室(いわゆる相部屋)からホテルコスト分月額8000円を値上げし、逆に個室の負担軽減にあてるという案になっています。このことは社会保障審議会・介護給付費分科会において委員から「お粥を食べている人からとりあげて、ご飯を食べている人にあげるようなものだ」というような批判がなされたことは周知のところです。
このたびの請願は、このような事情を背景に提出されたものであると受け止めています。
請願項目の1点目にある、大阪府の財政安定化基金を取り崩して、保険料の値上げ抑制に充ててほしい、という件についてですが、社会保障審議会介護保険部会において、「本来の基金の目的に支障を来すことのないよう、必要な額を確保した上で、基金の取り崩しを行い、保険料の軽減に活用できるようにするなどの法整備を検討すべき」との意見がありました。現在、市の方からも同趣旨の要望を国・府に対しておこなっているということなので、この請願の採択でさらに後押しすることになるだろうと思います。国・府に対して基金を取り崩し返還される分を市町村の負担軽減、保険料抑制に活用できるよう全力で働きかけていかねばならないと思います。
また介護給付費準備基金の全額繰り入については、委員会質疑の中で「全額でなくてもよい」ということが確認されました。
保険料については、担当課も11段階を検討し、低所得者層への負担軽減にむけて努力していただいていると理解しています。
一般会計の繰り入れについてはどうかと思いますが、総論的に介護保険料の抑制に努めるようにという請願の趣旨であり、実現可能な範囲です。
2項目の「利用料減免制度の創設」については、給付と負担についての課題であると考えます。少子化がいっそう進むなかで、高齢化率が上がり、サービス量の拡大にともなって今後も保険料が上昇するであろうと思われます。良いサービスを求め、低負担で済ますという具合に都合よくいかないため、常に悩ましい課題です。社会保険制度を維持するためには、国において介護保険制度だけではなく、さまざまな社会保障制度と一体的な検討を進めるなかで、負担について、住民と合意形成をはかっていくのが望ましいと考えますが、現状においては高所得者はさておき、低所得者への減免制度は保険者である市町村においても検討しなければならない課題かと思います。現に、府下の8自治体が採用しているという制度でもあるので、箕面市においても創設できるものと考えます。
委員会における市の試算では、第2段階にあたる年間の世帯収入80万円以下のサービス利用者は約1200人なので、おおまかに試算すると減免分は約1億円とのことでした。決して少ない額であるとはいえませんが、一般会計予算の約0,25%です。議会費を含め、さまざまな見直しや節約で捻出できる方法を模索したいと思います。
低所得者の可処分所得が今以上少なくなれば、何かを切り詰めざるをえません。とりわけ年収80万円以下の世帯にとっては、贅沢ができない、というレベルではありません。食費を切り詰め、医療費を節約し、イベント事の参加を辞退し、外出を控えるというふうに序序に人との付き合いも薄れていって引きこもりになっていく、という問題をもはらんでいます。減免に際しては厳正なチェックの必要がありますが、市民の暮らしを守るのが行政の役割であるという優先順位をつけるべきでると考えます。
3項目は、地域支援事業に、あらたに「介護予防・日常生活支援総合事業」が新設されたことについての提案項目です。要支援対象者への予防給付サービスや二次予防対象者への介護予防事業を総合的、一体的に行うことができるとされています。対象者が要支援サービスか、地域支援事業サービスか選択できるとのことで、ちなみに、2010年度の介護保険事業の決算総額は6億47万2000円でした。そのうち地域支援事業の3%枠は約1800万円です。従来の介護予防事業などに2,02%、約1213万円が執行されましたので、現状では約5900万円の余裕があると考えることができます。箕面市の要支援1、要支援2の認定者数は、昨年7月末の時点で併せて2356人であることを考慮すると、とてもまともなサービスが提供できるとは思えません。
要支援者に対してこの事業のサービスを採用するかどうかは、市町村の判断に委ねられていますので、やはり慎重に取り組むべきであると言えます。
以上、少子化・超高齢社会において、なおかつ単身世帯が増加しているなかで、格差が拡大する傾向にあります。当初検討されていた国・府・市町村と利用者の負担割合は見直されねばならいでしょうし、社会保険制度と他の社会保障制度や税のあり方を一体的に検討していかないと持続可能な制度とはなりえないでしょう。国に対しても全力で提言していかねばなりません。
それまでの間、市が市民の生活を守る立場に立った支援策を行うべきとの立場から、この請願には賛成といたします。
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