2011年9月議会 討論
○反対討論
◎ 平成22年度箕面市一般会計決算認定の件
認定第1号「平成22年度箕面市一般会計決算認定の件」に反対の意を表明し、以下理由を述べます。
1点目は、防災情報ネットワークシステム事業にみられる、交付金の使い方に関する問題です。この約1億円の事業は、国の「情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金」を活用したものです。そしてこの交付金の目的は、地域の人材を活用して、情報通信技術を用いることで地域雇用の創出、公共サービスの向上を図ることとなっています。さて、昨年4月、市が総務大臣宛に提出した交付金申請書には、交付事業の目的として「地域住民の安全・安心な生活を確保するため、ICTを利活用することで、ユビキタスセキュリティネットワークを構築し、システムに関わる地域ICT人材の育成・活用と雇用創出を進めるとともに、地域の防犯力の強化を図る」という内容が書かれています。また、申請書の事業の内容においては「ICT人材の育成・活用」として危機管理監1人、消防団長等28人、NPO職員3人とあり、さらに「育成・活用方法」として電子防犯マニュアルの整備やシステムの講習会を実施し、防犯対策の地域リーダーとして活用する。「次年度からは防犯対策の地域サポーターをさらに育成・活用していく」とあり、直接的な雇用人数として未就職者3人、消防団員13人などという具体的な数値も示されています。しかし、予算時、決算時における市の事業説明では、この申請書に記載されている内容と異なっており、直接的な雇用は存在せず、人材の育成も見当たりません。
さらに、防犯といいながら、カメラが設置されている場所がほとんどの市民に認知されていないため、防犯力が発揮されていません。あるいはカメラのネットワークシステムを構築したものの、監視・遠隔操作が活かされる体制が整えられておらず、またそのような必然性もありません。
さらに当初予算では説明されていなかった池田銀行北面の電子看板(デジタルサイネージ)について、なぜ1箇所に8枚も必要なのか、何故、市民が立ち止まる場所ではないところへ、防災情報を発信するのか、市の事業でありながら民間の広告を同時に掲載することのどこに「防犯・防災」の視点があるのかなど、まったく合理性に欠いています。無論、市民の評判もよろしくありません。
このような交付金の趣旨や目的から外れた執行は認められません。一生懸命交付金を探してくるという努力は評価したいと思いますが、しかしながら、とりあえず交付金を押さえておいて後から使い道を考える、あるいは建前とは違う使い方をする、というやり方はその後に発生する維持管理費を含めて、結局、税金の無駄遣いとなります。地方分権が叫ばれているなか、自治体の自律的な行財政運営が求められています。国から貰えるものは貰っておこう、という姿勢ではなく、本当に必要な事業に交付金を活かすという立場で臨むべきであると考えます。
2点目は、補助金執行の問題です。
商工業振興補助金事業において、実績報告書に領収書が添付されている申請者とそうでない申請者がありました。補助金20万円を執行した3件の実績報告書には、きちんと領収書が添付されていましたが、約650万円の補助金を執行した団体の実績報告書には領収書が一枚も添付されていませんでした。同一の補助金事業において、領収書添付が必要である申請者とそうでない申請者がある、というのは公平性に欠けます。また、基本的に補助金執行は税金を配分しているという意味で、大変重いものであり、商工業振興補助事業について、領収書添付が当たり前であると考えています。
しかし、総務常任委員会の質疑のなかで示された市の考え方、すなわち「領収書をすべて添付して、実績報告を出すというのはかなりの労力が要る。そういう場合は原課が直接団体の事務所に行って支出証票を確かめて、検査すればよい」というような考え方は、要綱や規則にも明記されていませんし、公平・公正・透明性の観点からも認められません。また加えて、当該団体内での監査が行われていて、かつ市の職員が赴いて検査しているので違法性がない。だから何ら問題がない、という考えも示されました。これでは市民や議会のチェックができなくてもよい、ということになり、議会の役割や市民参加を無視した見解として看過できません。このような補助金執行の手続きは、不適切であると考えます。
3点目は、箕面都市開発鰍ノ関する問題です。
昨年12月、第3セクターである同社が資金ショート寸前に陥ったため、箕面市は5億2千万円を同社に出資するという形で、同社の繰上げ返済を認めるという特定調停を受け入れて、同社を救済しました。この手法は事実上の借金棒引き策であり、市が同社におこなった融資の残金9億7000万円が70数年後に全額返済されるという担保はどこにもありませんし、誰も責任を負えません。2010年度は出資法人担当者を置いて箕面都市開発鰍ヨの関与を強めたはずでしたが、かやの市営駐車場の指定管理者選考にも落選し、結果的に同社の経営を立て直すことができませんでした。結局、このつけは市民が負担することとなります。どこまでも甘い第三セクターと、筆頭株主であるにも関わらず、それを見逃し蜜月状態を続けてきた市の責任は重大です。
4点目は、ゼロ試案に関する問題です。
私は行財政改革を否定するものではありません。ただし、自治体には企業や家計とは違って、「住民の暮らしを守る」という行政目的があります。この基本的な原則を堅持して運営されなくてはならないと考えます。「資源の最適配分機能と人権保障機能」、「所得の再分配と格差是正機能」が果たせたのか、という観点から、就学援助の縮小廃止、奨学資金貸付制度の改変、障害者の授産施設や作業所への運営補助金の削減、福祉予約バス運営事業の基準見直しなどの執行状況をみると、財政本来の機能や役割が達成されているとは思えません。
また、経常収支比率を下げることは基本的には大切ですが、そのために公共サービスを縮小・廃止すれば、生活を圧迫し、家計の購買力が低下すれば、経済循環が悪化し、財政に影響するという悪循環を招きます。
限りある財源のなかで、住民の安心・安全な暮らしや安定的な経済活動が行われるために、地域の課題が何であるか、その課題の担い手は誰か、住民参加で決定できる仕組みが重要です。そして将来的なまちづくりのビジョンを明確にし、実行するための負担のあり方などを市民の参画と協働で決定していくという考え方に立つべきであると考えます。残念ながら、現状では行政が自助・共助・公助の範囲を机上の論理で決めているといえますし、あらたな公共の担い手の育成にも消極的です。
以上、予算執行のすべてに問題があるとは言いませんが、行財政運営の根幹にかかわる重要な課題が散見されるため、当決算の認定には反対であることを表明しまして、討論を終わります。
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