2010年2月議会 一般質問
●一般質問
市民派ネット 中西とも子
「箕面市のこれからの高齢者施策について」一般質問します。
高齢化社会と言われて久しいですが、箕面市においても、超高齢社会が目前にせまってきました。ひとり暮らしの高齢者や昼間独居、高齢者のみの世帯などの増加が見込まれています。しかし高齢者をとりまく環境は、ライフスタイルの多様化にともなって、核家族化、地域コミュニティの崩壊など、厳しい状況におかれている世帯が少なくありません。また長寿化で認知症高齢者が増加するものと予想され、高齢者およびその家族の実情に即した多様なサービスが必要となってきます。
箕面市では現在「地域福祉計画」の策定にむけて準備が進んでいますが、これからの高齢者施策は、高齢者や介護者家族の状況に応じた介護・医療・地域のネットワークがいっそう重要になってきます。
この一般質問においては介護・医療・地域のネットワークづくりと総合的・包括的な高齢者施策、安心して歳を重ねることができる体制の構築について、市の方向性を問うものです。とりわけ、今回は介護を必要とする認知症高齢者とその家族の立場に立って質問を行います。
1点目に地域福祉計画について質問します。
現在、箕面市保健医療福祉総合審議会の地域福祉計画部会において「地域福祉計画」の策定作業が進められています。さらに箕面市社会福祉協議会では、市の地域福祉計画に即して、「地域福祉活動計画」を策定することになっています。今年に入り、校区別地域検討会が開催され、ワーキンググループにおいてそれぞれの地域課題にかかわる検討が行われたところです。地域のさまざまな課題を総合的に見つめようとする趣旨はよいと思いますが、本当にサポートを必要としている当事者の声をしっかり抽出できているか、どうか。今後、地域の人々が自らの地域課題に密着し、課題解決に向けて取り組めるまでに至るかどうかはこれからの進め方にかかっています。組織代表者やサービス提供者側が参加して、とおり一遍の計画策定にするのではなく、当事者の参加、またはその声をいかに吸い上げて課題化していくかがポイントであると考えます。地域ごとの総合福祉計画は、計画策定にかかわる過程がとても重要なのです。住民自身が自ら策定できるようフォローアップするのが行政の仕事であると考えますが、市の見解を求めます。
また、地域福祉計画の策定においては、行政が保管する要援護者リストを具体的にどのように活用するのでしょうか?災害時にはどんな手順で扱われるのか?有機的な活用法とルール化をどのように検討しているのでしょうか?以上、ご答弁を求めます。
2点目に災害時の援護を必要とする高齢者への対応について質問します。
地域福祉計画テーマ別検討会において、「災害時要援護者支援の仕組みづくり」が提案されています。そのなかで「安否確認、避難誘導体制について、実効性が不十分」「特に避難誘導体制については、未整備の様態」という具合に課題が指摘されています。身近な地域で、ご近所でいざというときに援護が必要な人については日頃から把握できていることが望ましいのですが、隣人の顔さえわからぬことも稀ではないご時世となっています。独居高齢者のワンルーム暮らしも珍しくはありませんし、寝たきりの高齢者の場合は、人目に触れることもありません。また、まさかの場合に民生・児童委員さんにすべてを託すというのも無理な話であると考えます。誰が誰に情報提供を行い、安否確認を行うのでしょうか?避難所への誘導はどのように行うのでしょうか?リストを落としこんだマップの作成を行う計画はあるのでしょうか?関係機関の間で情報共有方法はどのようになっているのでしょうか?
要援護者本人から同意を得ない場合であっても、地方公共団体の個人情報保護条例において、保有個人情報の目的外利用・第三者提供を可能とする規定を整備することにより、個人情報を他の関係機関との間で共有する方式(関係機関共有方式)がありますが、この方式についてはどのように考えているのでしょうか?以上ご答弁を求めます。
また箕面市では、高齢者や障害のある市民、妊産婦、外国人などで、避難所での生活が困難と思われる市民については二次的な避難場所として「特別避難施設」を指定していますが、たとえば高齢化率1位の北小地区には、この特別避難施設がありません。また、施設がある地域においても避難所までどのように誘導すればよいのか、現実問題として戸惑うことがたくさんあります。地域で名簿を作っても、現実的な課題解決について、具体性のある計画や体制が整っていなければ、生かすことができません。 実行可能な要援護者支援策の構築について、段取りやスケジュールはどのように検討されているのでしょうか?ご答弁をお願いします。
3点目に、在宅介護の体制づくりについて伺います。
高齢者、とりわけ75歳以上の高齢者の場合、昨日まで元気でも、突然の怪我や病気で想定外の健康状態に陥ることがあります。介護度2から突然要介護4以上になってしまい、痰吸引や胃ろうなどの処置が必要になることも珍しくありません。昨年まで元気に自力歩行ができていたのに、寝たきりになってしまうケースもありますし、たとえ元気でも認知症が進行し徘徊で家族が一時も目を離せなくなる場合もあります。介護者家族が働いていたり、子がひとりで親を介護していたり、あるいは老々介護、独居の場合などは、たちまち途方にくれてしまいます。
高齢者の尊厳を護り、家族の思いにかなった介護ができるよう介護プランを作成するのがケアマネージャーです。しかし、ケアプランを作成するケアマネージャーの経験や、情報収集量、資質によって当事者や家族の負担は随分と違ってきます。ケアマネージャーの育成について、行政はどのように関与していくのでしょうか?
また、医療的ケアが必要な重度化した場合は、在宅生活の維持や施設入所が困難となり費用面もあわせて、介護者家族に負担が重くのしかかります。
介護者がたとえば怪我や病気で入院した場合、病院は入院して間がないうちに退院後の身の振り方を家族に求めます。在宅か施設入所か。施設入所の場合、予約に3ヶ月ほどかかるために、重篤な介護者の家族は、気持ちの整理ができていない状態で、複数の施設入所の申し込みを病院から勧められるのです。在宅ケアの体制構築や、施設の充実は大きな課題です。
介護痰吸引や胃ろう、人口肛門の装具の交換など、一般的に医療行為とみなされていますが、たとえば痰吸引はヘルパーであっても自立支援法と介護保険の枠組みのなかで措置を行うことは可能です。しかし現状では多くの福祉事業所では吸引措置を断っても違法とはならないため、受け付けていないケースがほとんどです。
また、訪問看護ステーションについては、箕面市は撤退の方針を打ち出しており、この件はこのたびの委員会でも議論されましたが、市は「民間事業者が増えたので事足りる」という見解を示していました。しかし現状はどの事業所でも看護師が不足しており、週2〜3回の訪問が限度であり、事業所によっては、来訪時間を指定できないところもあります。さらに、チーム医療としての訪問看護が必要な場合もありますが、民間の事業所では医師、理学療法士や作業療法士・看護師などとチームを組んで訪問看護体制が整っているころがないため、市直営の訪問看護サービスを充実させることはとても重要であると考えます。家族は希望をもって少しでも体調が改善されることを望んでいます。
在宅介護ができなければ、施設や療養型病院に移るしかなく、施設入所が増えれば介護保険の適用で、市の支出も増えることになるでしょう。また、療養型病院へ入院した場合は、当事者または家族の負担が非常に重くなりますし、経済的ゆとりがない人は、入院もできません。これからますます重度の高齢者に必要になってくる訪問看護サービスを財政面から削るのではなく、在宅介護が再検討されることを強く要望します。以上、ご答弁を求めます。
4点目に介護保険制度の見直しについて質問します。
介護保険制度が施行されて10年になります。介護の社会化という意義はおおいにありましたが、一方で課題もあり、高齢化社会のセーフティネットとして、さらに良い制度に変えようと、見直しについては当事者や家族の団体、サービス提供事業者、研究者などの間で議論されることが多くなってきました。
例えば、小規模多機能型居宅介護施設は、ケアマネージャーとセットでなければ利用料金は全額利用者負担となることや、通院介助はできても、待ち時間帯は介護保険対象外であるため、別途全額実費になるなどをはじめ、さまざまな使いづらさがあります。
市は介護保険制度についてどのような課題があると考えておられるのでしょうか?利用者が活用しやすいように、どのような努力をはらっているのでしょうか?国に対してはどのような要望を行っておられますか?答弁を求めます。
また、介護保険料とサービスの質、介護労働者の賃金についてバランスをとるのが難しい状況です。介護保険制度の財源構造を変えなければならないと思いますが、合わせて見解を問うものです。
5点目に高齢者の特性に沿った医療体制の構築について質問します。
高齢化社会において、高齢者に特化した「老人医療専門科」の開設が望まれます。高齢者、とくに認知症を患う高齢者に対して、患者や家族からの相談電話窓口を開設したり、認知症を鑑別診断し、妄想や興奮などの周辺症状を見極めたり、肺炎などの身体合併症に対応するなど、拠点病院として、地域の開業医とのネットワークを構築し研修会を実施するというような医療体制が望まれます。認知症患者の場合、リハビリを施す際にもスムーズな意思疎通がはかれない場合が少なくありません。個々の患者の状態に応じて薬の処方や、不安を取り除く対応など、専門知識を有するスタッフの存在が要となってきます。患者の心と身体を見極めながら適切な措置を行うために、箕面市立病院の役割が重要になると思われますが、現在の医療制度・診療報酬体制のもとで、市からの繰り入れがなく、独立採算を追及すれば厳しいであろうと思われます。
今後、ますます重要となってくる高齢者専門医療体制について、市はどのように考えておられるか、答弁を求めます。
6点目、介護者家族の負担軽減について、を最後の質問とします。
介護保険の介護度が上がり、介護者の容態が重篤になれば家族の負担も増してきます。オムツやリハビリパンツはパッドと併用で毎月3,000円〜5,000円程度、人口肛門を装着すれば1万円程度、費用がかかります。介護保険等を利用すれば利用量に応じて料金負担が発生し、その他諸々の消耗品費用も必要となります。
加えて医療費も発生しますし、入院すればさらに追い討ちをかけることになります。中高所得世帯の場合は各種の控除も少なく、負担が増すばかりです。市がさまざまな制度設計を行う場合は、これらの点を是非考慮していただきたいと願います。介護者家族の負担が増すということは、本来家族が自らの老後に備えて蓄えなければならないものが、削減されるということでもあります。その意味では、将来的にさらに高齢化が進んだときの持続可能なまちづくりが極めて厳しくなるということです。
次に「移動支援」についてですが、病院から病院への移動の場合にはディマンドバスは使えない制度となっています。近隣病院への転院であっても民間の福祉輸送タクシーを利用した場合、5,000円から1万円程度の高負担となります。また福祉有償運送についての周知は徹底されていないため、利用者がこの福祉運送を十分に活用できていません。重度の高齢者の移動は切実であるため、改善策を要望します。また今後高齢化が加速しますが、身体や足腰が弱くなっている高齢者の移動手段について、どのように検討されているか、お答えください。
さらに、介護者家族の精神的負担を軽減するために、近くで気軽に集えるサロンが必要であるといわれています。介護者家族同士、アドバイスや相談などが行える癒しの場が必要なのです。利用可能な施設の開放や地域の空き家活用など、介護者家族支援策として検討していただきたいのですが、いかがでしょうか。以上、答弁を求めます。
なお、働いている介護者家族が安心して介護できる体制の整備が必要であると思います。その意味で、箕面市が率先して職員が介護休暇を取得できるように、積極推進すべきであると考えます。市の考えを問うものです。
以上、介護を必要とする重度の高齢者とその家族への包括的な支援策について、高齢者の尊厳を護り、当事者や家族の意向を尊重した支援体制の構築について、市の方向性を質問させていただきました。真摯な答弁を求め、一般質問を終わります。
以上
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