2009年2月議会 討論
○反対討論
市民派ネット 中西とも子
第1号議案「平成21年度箕面市一般会計予算」原案に反対し、北川照子議員ほか3名提案の修正案に賛成する立場で簡潔に討論いたします。
まず、原案について意見を述べます。
1点目は「緊急プラン」の扱いについてです。
2009年度の当初予算において、「緊急プラン」にかかわる事業については、パブリックコメントなどで、比較的反対の声が集中した「障害者福祉作業所運営補助金」「障害者雇用助成補助金」「小規模通所授産施設運営補助金」や「保育所保育料の改定」などは一旦先送りとなりましたが、「障害者・ひとり親家庭医療費助成事業」「身体障害者手帳診断料助成事業」などの扶助費や「奨学資金貸与事業」などは縮小・廃止を含む見直し策が講じられました。これは市長のいわれる「元気な市民を増やす」ことにはならず、同意しかねます。
私は少子高齢化、核家族化や単身化が進んでいる時代背景のなかで、厳しい経済情勢や社会構造がこの後も続くであろうというこの時期に、今後の市民生活の変化や動向を丁寧に捉えながら、政策決定と施策を進めていくべきと考えています。当然のことながら福祉や医療、社会保障、教育については最優先課題であるととらえています。
なお「緊急プラン」の検討についてですが、今回は4回の説明会とパブリックコメントだけで施策に反映されることになりました。次年度に先送りされたものもありますが、本来ならばもっと丁寧な意見交換の積み上げがあるべきだと思います。「緊急プラン」は市民の理解が得られなければ、協働でのりきっていくことはできず、したがって良いまちづくりへつなげることもできません。、行政は市民の声を聴き、何度も意見交換を重ね、また誠意をもって説明責任をはたすべきでしょう。また補助金削減など、一律なん%カットという予算配分は避けるべきで、それぞれの団体が担っている内容を精査して、それぞれに適したカットや配分をおこなうべきであると考えます。今回は事業内容や規模にかかわらず、ほとんどの補助事業が一律カットになっており、これでは事業者のやる気をそぐことにもつながります。
また北大阪急行延伸についてですが、「何が何でも進める」ということで、基金に5,000万円が積み上げられましたが、国保の値上げ等、市民生活に著しい影響を与える施策や、厳しい財政事情のなかで、北急延伸についても今一度ゼロベースで見直し、市民の声を聞くべきであると考えます。少なくとも今回の基金に積み上げる分は扶助費等に充てていただきたかったと思います。
2点目として「環境」に対する理念、施策が希薄であることです。
さきほど北川議員の討論にもありましたが、箕面らしさや箕面をPRするならば、やはり全庁を挙げて環境施策に取り組むことではないでしょうか。総合的に環境政策を考え本腰を入れた予算とはなっていないように思います。また、この当初予算には、新名神高速道路の推進会議にかかわる予算も含まれています。やはり、緑を大切にするというからには、箕面の環境破壊につながる事業については、毅然とした対応で断固NOという立場を国に対しても貫ぬいていただきたかったので、この予算には反対いたします。
3点目に市民協働、と共生のまちづくりの視点がこの予算からは見えてこない点です。
これからは市民参加で協働・共生のまちづくりが不可欠です。市役所の機構改革にかんする討論でも述べられていましたが、市民の力を十分に活用できるシステム作りではなく、どちらかといえばトップダウン形式で決めていくという中央集権的な行政組織運営が気にかかります。お互いがパートナーシップで向き合うことで、真の協働となります。市民と行政が形式的にではなく、地域において共に支えあえるコミュニティーを形成し、活動することが元気な市民の再生産につながります。
以上市民の暮らしの底上げ、環境施策推進、協働・共生のまちづくりを求めて原案には反対するものです。
次に、北川照子議員ほか3名提案の修正案に対する賛成討論を行います。
さきほどの提案説明でも述べられていましたが、彩都の小中一貫校建設については、今しばらく立ち止まり、人口動向等を見極めてから工事に着手すべきであると考えます。彩都の小中一貫校建設においては、これまでも二転三転したあげく、議決されたものであることは承知しています。本来ならばあり得ないことかもしれませんが、今一度不可能を可能とするチャレンジをしてはどうかと思います。彩都の人口推計については第5次総合計画策定委員の間でも疑問視する意見が聞かれました。めまぐるしく変化している今日的状況であるため、拙速に進めるのではなく、一旦立ち止まって冷静に判断するべきです。人口の張りつきによっては、小中一貫校の建設を見直さなければならないかもしれませんし、逆に、施設一体型の学校に変更することが必要かもしれません。とにかく、「緊急プラン」が提案されたタイミングでもあり、またURとの正式契約を締結する前であるこの機会を逃すと、もうチャンスはありません。子や孫たちの世代に負の遺産を残さないためにも、慎重に対処すべきであり、立ち止まる勇気を持ちたいと思います。
なお、就学については、さきほどの北川照子議員の説明や増田議員の討論にもありましたように既存の学校へ通えるよう整備することを真剣に考えたいと思います。ちなみに、現在「彩都西」駅そばに117戸の大型マンションが建設予定となっています。配布チラシによると、入居予定が2010年3月下旬となっています。たちまちこのマンションに就学児童・生徒が転入してきた場合は、予定通り学校建設に着手したとしても間に合わないため、既存の学校へ編入することになるのではないでしょうか。
先ほど内海議員からこれまでの箕面の区画整理事業や開発についての討論がありました。里山を開き、ニュータウンや団地ができて、そこに新しい住民が移り住み、今12万7千余の自治体となっています。失うものとともに得るものもあったことは否定いたしません。しかし、だからといっていつまでもエンドレスで開発を進めるわけにはいきません。市の財政状況や人口構成、経済構造を考えるならば、この東西にのびたまちをさらに広げていくことが、本当に将来のためになるのか、今ある社会資源や空き家を整備してまちの再生をはかるという選択肢について、しっかりと議論すべきではないかと考え、あえて市民派ネットではともすれば無謀であるというご批判をうけることも覚悟の上でこのたびの提起をいたしました。是非、前向きな議論を期待するものです。
以上、原案に反対し、北川照子ほか3名の修正議案に賛成の討論といたします。
第29号議案 「箕面市奨学資金貸付基金条例制定の件」に反対の立場で討論します。
この条例案は、箕面市独自の奨学金にかかる基金について、従来の積み立て基金を廃止してあらたに運用基金である箕面市奨学資金貸付基金を設置し、奨学金および入学準備金を貸与するための原資とすることと、対象から大学生を外し、高校生に対する貸与額を現行の公立高校・月額5,000円、私立高校・月額1万円をそれぞれ2.5倍に増額する、というものです。
また条例が提案された経緯については、当初「緊急プラン」で奨学貸付金事業の「新規貸付廃止」が提案されたことを受けて検討された結果、廃止ではなく進学率55%の大学生を対象から外し、いまや進学率が98%となっている高校生については授業料がまかなえる程度の奨学資金が貸与できるように強化をはかったというものでした。なお大学生については、自治体独自の奨学金制度を設けているのは府下では10市程度、北摂7市では池田市・高槻市・箕面市の3市だけだということも考慮して、また制度の存続のために廃止したというのが教育委員会の説明でした。
文教常任委員会では制度の変更内容や運用などについて様々な議論が交わされましたが、その後の調査で得た内容も踏まえながら以下に反対の理由を述べていきます。
まず1点目に、この奨学金制度を変更する大きな要因が「市の財政出動を抑える」ことにある点です。
委員会では滞納額が多いことや持続可能な制度にするために、貸付制度を見直したという趣旨の説明がありました。また従来の積み立て基金が約4億9百万円あったものを廃止してあらたに2億5千万円の運用基金を設置することにしていますが、このうち2億1,500万円は債権であり、すでに20年以上も前のものも含まれているため、中にはいわば「不良債権化」しているものもあります。そこで新基金では、3,500万円を原資として運営されるというものです。
基金の中で運用し、チェック機能を果たすということですが、貸付人数は基金の範囲内で決定すると第8条で規定されているわけですから、どれだけ需要があるかということよりも、最初からこの資金化が可能な枠内におさまる人数だけ貸付ることになります。市長は委員会答弁のなかで「あくまで持続可能な貸付制度というのが一番だと思いますので、逆に回収がきっちりできていますと、回っていますという形なのであれば、もちろんその貸付の単価を上げるであるとか、運用をもう少し柔軟にするであるとか、そういうことももちろん充分可能だというふうに思う」と述べておられます。要するに、制度がきちんと機能するかどうかは利用者しだいであり、利用者の「連帯責任」として運用面も厳しくしたということになります。しかし、本来教育の機会均等は自治体の責務として果たさねばならない課題です。とくに昨今の不況で、学費を捻出できない家庭が増加するであろうことは疑う余地がありません。今後、さらに手厚く、利用しやすい制度に変えていかねばならない時世なのに、本末転倒の政策理念であるといえます。
2点目に実態に即した制度になっているかの検証がなされず、新制度に移行されようとしている点です。
2008年度の箕面市奨学金制度の利用実績は公立高校生が6人、私学の高校生が11人、大学生は22人、また入学準備金については私立高校生が21人、大学生は12人でした。箕面市の高校生は概算で約3,600人、大学生は概算で約2,020人です。つまり、利用率はわずか1〜2%程度といえます。2007年度に箕面市の就学援助を受けている公立中学生が484人、約15.9%であることを考慮すると、本来は奨学金を必要とする生徒・学生はもっと多いはずではないでしょうか。今後の情勢を考慮すればなおさらです。
また、滞納者が多い、とされている件についてですが、奨学資金制度の現在の滞納額累計は2,248万8千円です。現年度分の調停額が1,969万6千円、うち未済額は約481万円で、1,488万7千円は返済ずみとなっており、約76%の収納率です。過年度分の滞納額は2,081万円ですが、収納対策の結果、このうちから約313万円が収納済となっています。過年度の未収分約2,081万円と現年分の滞納481万円を足したものが滞納累計額約2,249万円となっているのです。このように、奨学資金を利用している8割近い市民はきちんと返済をしているわけです。ですから、「滞納対策のために、運用を厳しくした」という措置は、多くの利用者とこれから利用を考えている、この制度を当てにしていた市民にとっては納得のいかぬ手段であるといえます。「借りたお金は返すのがあたりまえ」「収納率は100%が当然である」というふうに捉えるなど、さまざまなご意見があるかもしれませんが、貧困と就学の問題がクローズアップされている今日、さらに実態に応じた柔軟性のある返済方法や制度設計を検討すべきだと考えます。
3点目に、「猶予措置があるので問題はない」という考え方についての反論です。
このたびの新制度から新規貸付申請の際には従来の保証人1名から2名という厳しいハードルが用意されました。約2割の滞納者対策としてこのような厳しい措置となったようですが、奨学制度の趣旨や自治体の役割を考えれば、入り口の部分で、排除するようなハードルの設定は容認できません。また返済の開始時期について、現行制度では貸与終了の1年後からであったものが、新制度では貸与終了の翌月からとなっています。就職の内定取り消しやアルバイト、非正規雇用の場合など極めて不安定な雇用情勢下であるため、結局、奨学資金を活用することを断念して、進学を諦めるとか、中退してしまうケースが想定されます。今回、経済的困窮者や引き続き奨学金貸与を受けながら大学へ進学する人には、運用面での猶予をはかっていくということですが、「猶予があるから大丈夫」というのであれば、条例にある程度盛りこむか、運用面での充分な周知が図られない限りは、猶予も活きてはきません。この点について、現部に確認しましたが、やはり周知を徹底すれば、回収率に響くので、できないとのことでした。
4点目は対象から大学生を外したことについてです。
大学進学率は55%なので対象外とし、民間の制度が充実しているので、それを利用すればこと足りるという説明でした。
高校進学率は98%なので、市が支援し、大学生について市は支援しないという考え方には納得できかねます。大学進学、すなわち高等教育を受けるのは贅沢なのでしょうか。格差拡大が懸念されている社会状況だからこそ、行政のできるかぎりの支援が必要なのです。本来ならばもっと国に支援してもらいたいところですが、国の施策を待ってはいられないなかで、基礎自治体として可能なかぎり支援していく姿勢が重要だと考えます。学部によっては自立支援・就労支援にもつながります。卒業後、あるいは在学中に箕面市への貢献を条件に給与を含めた制度設計を検討すべきではないでしょうか。教育は個人的な自己実現だけではなく、卒業後の社会貢献が行える人材、いわば箕面市の未来を担う人材を育成するためにも、有意義であると考えます。
なお、民間の制度利用についてですが、大阪府育英会・奨学金貸付事業には大学生対象の枠がありません。旧日本育英会である日本学生支援機構では、バリエーション豊かな制度を揃えてはいますが、厳しい回収強化策が図られ、個人信用情報機関に滞納者の情報を登録する制度を導入し、これに同意しなければ、申請ができない仕組みになっています。金融機関から借り入れて学費や生活資金に充てている人にとっては兵糧攻めに遭ったかのようになりますし、昨今のように就職や雇用問題に不安がつきまとう状況下では将来、何がおこるか分からないため、絶対に奨学金が返せるという十分な目処がたたず、よって大学進学や継続をあきらめなければならないことにつながっていきます。その他、滞納者への延滞利息や法的措置の行使など、極めて厳しい措置や検討がなされています。このようななかで、いよいよ自治体の役割が重要となってくることを、しっかり意識しなければならないのです。
本年3月9日付け、朝日新聞の記事によると、「奨学金の会」の三輪さだのぶ会長は、日本学生支援機構の奨学金回収強化策について、ある女子学生が奨学金をあてにできないと進学をあきらめた実例などを紹介し「利用者が借りることに不安を感じ、本来の奨学機能が半減してしまうのではないか」と奨学金制度の変質につながることを懸念しながら次のように述べています。「学生は将来への不安を募らせている。派遣切りなどがどんどん行われている社会状況なのに、あえて奨学金制度を劣化させる手段はとるべきでない。奨学金は学生の命綱。今は、より太い命綱にするべきなのに、それを切り刻む愚策だと思う。学生の気持ちになり、未来の世代をもっと想像しながら進めてほしい」またさらに、支援機構が制度を維持するために奨学金の回収強化の重要性を訴えていることに対しては「貸与制である以上、返すのは当然だ。ただ、無理に返させるシステムにしたら、返すための『貧困』に陥る。教育の機会均等は、一人ひとりの国民が金を借りて返して回していく――というのではなく、国や自治体の責任。その大原則を踏み外してはいけない」と指摘しています。私はまさに、しつこいようですが、この「大原則」に立ち返って、自治体の責務であるところの教育の機会均等をどのように実現していくかという根本的な課題を追求しなければならないと考えます。厳しい財政ではありますが、箕面の未来を紡ぐためにも、人財育成には投資を惜しむべきではなく、だれにもチャンスが与えられる社会の構築と、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」まちづくりを行う箕面市でありたいという思いを寄せて、討論を終えます。
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