2009年2月議会(2009.03.20) 一般質問
●一般質問
市民派ネット 中西とも子
これまで箕面市議会においては防災対策にまつわる活発な議論が展開されてきました。2009年度の施政方針においても政策の柱のなかに位置づけられている重要な施策のひとつであり、また市民の関心度も非常に高いものです。
さて、昨今では防災対策について「女性の視点」という角度から検討をかさね、具体的な課題を防災対策に加えようとする自治体が多く見うけられるようになってきました。大阪府においても防災に関する計画や施策に男女共同参画の視点が盛り込まれています。
しかし、「箕面市地域防災計画」においては「女性の視点」を明確にした内容とはなっておらず、また箕面市議会においても女性の視点から防災対策を考えた議論が希薄であるため、このたび問題提起として質問します。
一点目に震災時の課題についての質問です。
地震などの大規模な自然災害が発生した場合、災害弱者である高齢者や障害者、子ども、そして貧困層などへの被害がとくに大きくなると言われています。たとえば1995年の阪神・淡路大震災では女性の死者数は犠牲者の約6割、すなわち男性の約1.5倍です。被害が大きかった神戸市東灘区では老朽化した木造の文化住宅密集地域で多くの高齢女性が暮らしていて被害に遭いました。また、震災当時、約10万人の女性が一斉に解雇され、なかには震災を理由にした便乗解雇もあったといわれています。その多くはパートなどの非正規雇用であり、低賃金で切り詰めながら懸命に暮らしていた、とくに母子家庭やひとり暮らしの低年金生活の高齢女性にとっては非情な追い討ちとなりました。さらに被災後は夫たちが会社の復興に走っていり間に妻は父母の介護や情緒不安定になった子どもの問題のいっさいの責任を負わされて行き場のないなかで離婚に至った例も多いとのことです。
また、あまり語られていませんが災害と性暴力やDVとの関係も忘れてはならない課題です。NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべは「災害時、性暴力や児童虐待、DVが増加することは米国など海外の報告書でも明らかです。けれど神戸ではそうした事実は“なかった”とされた」と指摘しています。そしてさらに「県の職員が聞いた例では、ある避難所で性暴力被害が発生したとき、責任者が“加害者も被災者、目くじらをたてるな”と言ったそうだ。“避難所のトイレが汚いため半壊の自宅に戻ったところを襲われた被害もあった」との公式に語られてこなかった話も披露しています。大規模災害時に女性の人権に対する配慮が必要であることはいうまでもありませんし、これは高齢者、障害者、子どもたちに対しても同様であると考えます。
箕面市は以上のような震災における被害状況について、どのような認識をもっているでしょうか?答弁を求めます。
2点目に箕面市の取りくみについて質問します。
当市では「箕面市地域防災計画」「箕面市防災都市づくり計画」が策定され、また新しいところでは本年1月に「箕面市危機管理指針」がまとめられていて、危機管理の定義や対策などが明示されています。
「箕面市防災都市づくり計画」では、阪神・淡路大震災の教訓や市民参画による取りくみなど防災対策について市民への啓発が行なわれていますし、「箕面市地域防災計画」では防災予防、災害時の応急対策や災害復旧・復興計画など具体的に地域で実践するための詳細な計画が示されています。しかし残念ながらこれらのいずれについても、「女性の視点」が活かされた内容はほとんど見出すことができません。
昨年(2008年)12月、全国知事会 男女共同参画特別委員会 災害対策特別委員会は「女性・地域住民からみた防災施策のあり方に関する調査結果について」という防災分野における男女共同参画の取組についてまとめたものを公表しました。
同委員会の委員長を務める堂本暁子知事は、防災対策における女性の視点の重要性を力説し、「大災害時の避難所での女性、高齢者ら被災者への対応、防災のあり方に女性の視点が必要だ」と述べています。
さてこの調査結果にいたる経緯についてですが、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などをはじめとする大規模災害が続発するなか、「(被災地の)避難所などにおける女性の負担が大きかったことや女性の参画の必要性が報告されている」という被災現場での実態があきらかになってきあした。また2008年2月に男女共同参画特別委員会で行なわれた「防災分野における男女共同参画の推進に関する調査」の結果、3つの課題、すなわち
- 防災対策会議の女性委員の参画など、政策の意思決定過程における女性の意見が取り入れられにくい
- 女性や乳幼児などのための災害備蓄の整備が不十分
- 災害時の女性の活動環境が不十分
などの問題が明らかになったため、男女共同参画特別委員会と災害対策特別委員会が協働で、同年6月に10道府県が参加してワーキンググループを設置しました。そこでさきほどの2月の調査結果を踏まえて、さらにキメ細かい全国調査を行うため9月に全国の都道府県、市町村を対象とした「女性・地域住民からみた防災施策のあり方に関する調査」が実施されました。この調査は47道府県と1,809の市町村を対象に行なわれ、98%以上の回答が得られました。
このときの調査の主な内容は、「女性や高齢者などの地域住民を対象とした防災力強化について」「避難所における女性、妊産婦・乳幼児を持つ女性、高齢者などへの支援について」「妊産婦・乳幼児を持つ女性、高齢者や障害のある人、病人などのニーズを踏まえた備蓄について」「防災に関する政策等の決定過程における女性の参画について」という4項目についてであり、それぞれの項目のなかで詳しく具体的な回答を求めています。
そこでお尋ねします。
箕面市はこの調査についてどのような回答をおこなったのでしょうか?各調査項目の趣旨に照らし、それぞれ具体的にどのような回答をおこなったのでしょうか?(要答弁)地域防災計画の策定メンバーについては何人の女性が参画し、またそれは全体の何%にあたるのかもお答えください。
なお市は、この調査をどのように受け止めたのでしょうか?また、公表された調査結果について、どのような認識をもったのか?併せて答弁を求めます。今後、「箕面市地域防災計画」や「箕面市防災都市づくり計画」「箕面市危機管理指針」などへの追加や市民への啓発など、「女性の視点」をいかした防災対策を取り入れて見直しをはかるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。見解を求めます。
具体的な話になりますが、たとえば避難所では安心・安全・快適な空間の確保が必要です。たとえば、
- 避難所運営に男性と女性の責任者を配置
- 一人暮らしの女性や、高齢者、障害者、乳幼児のいる家庭等の被災者の状況に応じ、間仕切りをするなどの配慮、快適な居住スペースの確保
- 仮設トイレの設置にあたっては、特に女性やこどもの安心・安全に配慮した場所や通路を確保
- 男女別の更衣スペースを確保
- 女性用洗濯物の干し場を確保
- 乳幼児のいる家庭に配慮した授乳スペース・育児スペースを確保
- 女性やこどもへの暴力を防止し、心身の健康維持やケアに向けた女性やこどものための相談窓口を設置
以上の配慮で、被災者が、さらなる被害を受けることがないよう心を配り、被災者同士のプライバシーや、特に女性の安心・安全が守られることになります。今後について以上を是非防災対策に加えてもらいただきいと考えます。合せて見解を問うものです。
なお、男女共同参画センター横浜南では今年1月に阪神大震災などの被災者の声を基に、女性の視点で対策をまとめた『わたしの防犯力ノート』が発行されました。女性が災害時に直面する不安やリスクや課題を挙げながら、相談窓口や防災サイトなどを紹介しています。阪神大震災時に、若い独居女性が地縁の薄さから支援を受けにくかった事例なども報告されており、防災をイメージする力、被災後には地域でつながっていくための力などさまざまなアドバイスや、普段から災害に強くなる力を身につけることの大切さ、まちや暮らしを守るための提案がまとめられています。
他の自治体でもこのようなリーフレットの製作に取組んでいるところがあります。日頃から防災をイメージし、準備しておくことが大事ですし、事前の啓発活動の中身が大事なのです。是非、箕面市でも前向きに検討してもらいたいのですがいかがかでしょうか?答弁を求めます。
3点目に箕面市男女協働参画推進基本計画の防災項目追加について質問します。
阪神淡路大震災や新潟県中越地震の聞き取り調査で明らかになった「女性は災害時に被害をうけやすい」ことや「災害復旧活動には女性の視点が欠かせない」ことなどから、第2次男女共同参画基本計画では「新たな取組を必要とする分野」として「防災・災害復興」があらためて課題化され追加されました。そのなかで、「防災分野での固定的な性別役割分担意識を見直すとともに、防災に関する政策・方針決定過程への女性の参画を拡大する。」というように防災分野における社会的性別の視点を明記しています。
さらに「防災基本計画に規定した男女のニーズの違い等男女双方の視点に十分配慮すべき事項について、地方公共団体に対して地域防災計画に規定するよう要請する等、その推進を図る。」とあります。つまり各自治体で男女協働参画の視点を明確にした(規定した)防災計画の策定を促しているのです。そしてすでに多くの自治体では取組が進められています。現在箕面市では、第4期箕面市男女協働参画推進計画で、これは2005年〜2011年の期間にあたりますが、進捗管理と総括作業をおこなっており、また現在は次期の第5期箕面市男女協働参画推進計画の策定準備にかかるところです。是非とも第2次男女共同参画基本計画にもとづき、箕面市の基本計画が策定されるべきであると考えます。市は第5期の推進計画に反映させる意思はあるのでしょうか?答弁を求めます。
最後に、防災対策はまちづくりとも深くかかわっています。第2次推進計画においても「地域コミュニティにおける防災活動の意義は大きく、男女の参画や災害や防災に関する知識の修得を進める。また、固定的な性別役割分担意識の見直し、方針決定過程への女性の参画の促進、及び女性リーダーの育成など、男女共同参画の視点を取り入れることを推奨する。」とあるように、地域における防災活動に男女協働参画の視点が浸透するための様々な施策をおこなっていただきたいと考えますがいかがでしょうか。日頃から、男女協働参画の視点で人権意識を大切にした互いを尊重する地域コミュニティの創造を強く意識する必要があると思います。
以上、真摯な理事者の答弁を求めます。
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