2008年9月議会(2008.10.03) 一般質問

●一般質問

市民派ネット 中西とも子

◎全国学力・学習状況調査で見えてきた問題と今後の課題について

私は文教常任委員会においても、この全国学力テストに関して質問をさせていただき、また昨日の代表質問でもこの件についての質疑がありましたが、箕面の教育の方向性にかかわる重要な課題でありますので、再度一般質問におきまして課題の整理をしながら、またその後の調査も加えて質問いたします。

全国学力・学習状況調査は、2007年度から実施され、今年度は2回目となります。そもそも1960年代にも全国テストは行われていましたが、学校・地域間の競争が激化し、競争をあおるとの批判から中止となったものです。約40年ぶりに復活したもので、今回は児童生徒の学習意欲や生活習慣、授業方法などの調査もあわせて、小学校6年生と中学3年生を対象におこなわれました。目的は一定の教育水準が保たれているか、を把握し、課題を明確にして教育指導の改善を図ることとされました。ちなみにこの調査には約60億円を費やしています。

調査の結果、大阪府は全国的に下位だったことを受けて、橋下府知事が「このざまは何だ」「ダメ教員は排除して、教員のがんばりを引き出す」「市町村別の数値の結果を公表すれば、どの市町村が仕事をしていないかすぐわかる」「公開・非公開によって市町村の予算配分に差をつける」等々の発言がマスコミ報道で取り上げられ、話題になったのは周知のとおりです。

私はことばの端々をとりあげて評論する気はありませんが、一連の発言は暴言であるとともに、れっきとした府知事の教育行政に対する政治姿勢を示しています。その姿勢に対して、我々はどうあるべきかが問われていると考えています。だからこそ、教育委員会には毅然とした対応とブレない姿勢を堅持していただきたいのです。

このたび全国学力テストの結果公表のありかたをめぐっては、各自治体によって、首長や教育委員会の対応が分かれました。それぞれの教育理念や主体性、教育にかける意気込みやなどが浮き彫りになったと思います。

たとえば、吹田市の坂口市長は市のホームページにおいて9月19日付けで「『今こそ、教育の本質を見失ってはならない』今の雪崩(せつほう)を打ったような点数至上主義への流れを懸念する」と題した見解を表明し、これまでの吹田市が培ってきた、教育の実績や理念に基づく冷静な判断を示し、市民に対する説明責任を果たされています。

また、豊中市教育委員会事務局は、学力テストに関する数値の公開をせず、昨年同様、文章による結果報告を行いたいという意向ですが、教育委員会議のなかで「保護者と子どもたちに対してしっかり説明した上で、意見を聞く必要がある」との意見をふまえ、早急に結論は出さずに、市内7箇所で保護者説明会を開催し、さらに、別途子どもたちの意見を聞くよう各学校にも依頼しているとのことです。

(全国テストは小学6年生と中学3年生が受験しました)なお「テストを受けた子どもたちは、その結果から得られた改善策を享受することはできないが、彼らは後輩たちのためにテストを受けてくれたのだから、その気持ちを裏切らないようにしなければならない」という趣旨の教育長の発言や、「数値が公開されたらどうなるのかを子どもたちに説明した上で意見を聞いてほしい」という教育委員長の要望があったそうです。

では1点目に、市教委の主体性と説明責任について質問します。

そもそも「全国学力・学習状況調査」の参加については、箕面市教育委員会の方針として過度な競争を招く危険性があるので、市単位、学校単位の公表は行わない、という前提でした。これは、2007年度からの変わらぬ市教委の姿勢であったはずです。今年度の2月12日に開催された第2回教育委員会定例会において、2008年度の学力テストの参加に関する市民からの陳情についての審議のなかで、事務局は以下のように説明されています。「市内全体や各校の状況について、保護者や市民のみなさまへの十分な説明責任を果たすとともに、市町村間や学校間の序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮し、平均正答率などによる公表は一切行わず、調査結果を分析し、文書によって公表しました」つまり、数値公表をしなくても「十分な説明責任をはたしてきた」という認識であったのです。

なお市教委は一貫して「学力テストには参加するが、市単位・学校単位の正答率の公表は行わない」と表明してきました。にもかかわらず、テストに参加したあとで方針を180度変更したことについて、文教常任委員会でも追及しましたが明確な説明がなされていません。「説明責任を果たすために市の平均正答率を公表する」という常任委員会での答弁は「方針を変えた」ことの説明にはなっていません。納得のいく十分な説明を求めます。また、各学校が子どもたちに個人票を返却したのが9月9日です。このときの市内のある公立学校の保護者宛の文書には「……平均正答率等による結果の公表はせず、自校の傾向等を分析し、今後の教育活動へ活かしていくとともに、分析結果を文書でお知らせいたします。」とあります。それから10日もたたないうちに、これは行政の稼動日数としてはたった6日間ですが、このような短期間のうちに何故方針を変更したのでしょうか。22日の文教常任委員会での議論や、教育現場や保護者の声を聞いてから最終決定を行うこともできたはずです。

「橋下府知事の発言や方針の云々ではなく」との文教常任委員会での答弁でしたが、9月10日の府教委の要請や、9月5日の倉田市長の意向という圧力に屈したものであることは誰の目にも明らかでしょう。教育委員会の中立性を堅持できなかったことは大変遺憾であるといわざるを得ません。橋下府知事の、予算を盾にした恫喝は言語道断ですが、そのことに毅然とした対応が行えず“長いものにまかれる”式の市教委の姿勢は、子どもたちに悪しきお手本を示すのではないかと懸念します。まさに市教委の責任は重大であるといえます。市教委はこの決定を行う前に、現場の声、保護者や子どもたちにどのように説明し、また声を聞いたのでしょうか?

短期間で方針を180度転換したわりには、10月8日現在においても子どもたちや保護者への説明が十分に果たされていません。また9月18日に公表された内容についても配布されていません。これはどういうことなのでしょうか?これで説明責任を果たされているとお考えなのでしょうか?

市民に対しては『もみじだより』10月号で告知を行うとのことでしたが、そこには市教委の方針変更の理由や、前年度のような文章による結果公表、市の平均正答率を公表していることなどは一切記されていません。また方針を変えたことについての経緯も不明です。これではまだまだ説明は不十分であり、多くの市民がこの学力テストの目的や何故「公開・非公開」でマスコミがとりあげているのか、なぜ数値公表で問題が発生する危険があるのか、なぜ点数至上主義ではいけないのか、理解できないのではないでしょうか。

以上について説明を求めます。

2点目に、市教育委員会の閉鎖性と情報公開についてお尋ねします。

9月18日の臨時教育委員会で、急遽市の平均正答率を公開することが決定されました。9月12日の段階ではまだ臨時会議の日程すら決まっていない、とのことであったのに、突如17日の夕刻になって18日の臨時教育委員会議の開催を知らされました。

10日から18日の委員会までに教育委員と事務局のあいだで4回の協議会が開催された、とのことですが、その協議会は非公開で開催され、会議録用の録音もなければ会議録も作成されていません。あるのは簡単なメモのみです。密室の話合いで重要な結論に導いているわけですが、市民は協議の内容を正確に知ることができません。このような教育委員会の閉鎖的なあり方は改善し、市民に開かれた教育委員会運営に転換すべきであると思いますが、いかがでしょうか?

またその説明を受けて、市長はどのような意見を述べられたのでしょうか?せめて市長と教育委員会の会談や協議についてはおおっぴらにし、市民に公開していただきたいものですし、秘密にしなければならない理由は見当たらないと思われます。答弁を求めます。

重ねて申しますが教育委員会の前段調整会議としておこなわれる協議会が非公開で行われています。本番の委員会は“出来レース”を見ているようです。各委員の議論の過程が割愛されているため、傍聴者には非常にわかりづらいものとなっています。市民は形式的な委員会ではなく、議論の過程が知りたいと願っています。真に市民参加で箕面の教育を考え、地域で教育の課題に取り組んでいこうとするならば、密室審議をすべきでないと考えますがいかがでしょうか。市民の知る権利を保障し、市民協働で箕面の教育に取り組んでいくためにも、現在の閉鎖的な教育委員会のありかたを改善すべきです。ガラス張りの運営を強く要請します。また、重要な案件については、子どもたちや保護者が直接教育委員と意見交換ができるような仕組みづくりに取り組んでいただきたいと思いますがいかがでしょうか。

3点目に現場の課題について質問します。

今後もこの学力テストに参加することが合理的かつ意義のあることなのか。来年度の参加の是非について再検討するべきではないでしょうか。

費用対効果や費やす時間、危険性について考えると、やはり2007年度、2008年度の学力テストに参加しましたが、すでに箕面市の課題は明確なのではないでしょうか。また効果検証にあたっては毎年実施する必要はなく、悉皆調査ではなく抽出調査でよいのではないかという声も多く聞かれます。

また、大阪府は今年度内に府下で独自の学力テストを実施する予定であると聞いています。それも、全国学力・学習状況調査の大阪府の結果が思わしくなかったことを受けてのことなのでしょうか。現在の教育現場でかかえている課題が国語と算数・数学という特定の教科の点数だけに集中しているようにみえます。もっともっと解消しなければならない問題、たとえば不登校やいじめ、経済格差によって生じている子どもをとりまく環境の問題をはじめ、雑務ほかに追われ悲鳴をあげている現場の教員をいかに支援するかなど、今、市教委が行わなければならないことは、現場の声を聞き、抱えている課題をいかにとりくむのかを前提に、各学校現場の活動を後押しすることではないでしょうか?そのためには現場の混乱を招くことについてはしっかり把握し、市教委が防波堤となるべきではないでしょうか。現在、大阪府が実施しようとしている学力テストの目的と概要について説明を求めます。そしてその件で現場の声はどのようになっているのでしょうか。

また、学校現場では教員の研修費の削減で悲鳴が聞こえています。市教委はこの現場の声をどのように把握し、かつ対応しているのでしょうか?府や市に対してどのように要望していますか?

その他、箕面の教育的課題について市教委はどのように把握しているか、答弁を求めます。

大阪府の教育の方向性が非常に懸念される状況下で、各市の教育委員会の主体的な行動が重要であるといえます。地方自治を尊重する、と公言している橋下府知事に対し臆することなく、また市教委は府教育委員会に対しても、是々非々で発言、提言、要望していくべきではないのでしょうか。

先の臨時教育委員会での付帯決議のなかで「2〜3年、様子を見てから問題が生じれば見直しも検討する」とありましたが、この発想はいかがなものかと思います。そもそも問題があると考えられたからこそ「市や学校の平均正答率は公表しない」という決定がなされたはずです。それなのに、今回は「まぁ、とりあえずやってみて問題がおこったらやめとこう」と無責任なことを言っているようにも聞こえます。しかし問題が生じてからでは遅いのです。問題が生じないよう最善を尽くし、最大の配慮を払うべきなのです。市の平均正答率の公表によって、市の平均と自分の学校はいいのか、悪いのか、という判断基準が生まれてくるでしょう。まもなく、市内の学校単位でのおおむねの順位が明らかになり、わずか2教科の数字が「学力の一部」であるにもかかわらず、ひとり歩きすることが予想されます。「生きる力」は競争に打ち勝つものだけに与えられるという錯覚に陥ることのないよう、最大の配慮が必要であるのに、これまで箕面市が培ってきた教育の理念が、崩壊するかもしれないという危険性があります。

このテストに参加する意義について懐疑的な専門家も多く見られます。自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」でさえ、「目的とコストが見合わない」無駄な事業であると報告しています。

以上、全国学力テストの今後の参加については、ぜひ見直しをはかっていただきたいと要望いたします。

今教育現場が抱えている課題、直面している問題解決に向け、教育委員会としてのあり方について一般質問しましたが、最後に以上の質問を踏まえ、市長に対しましても、あるべき教育行政を目指して、これまで箕面市が培ってきた人権教育を尊重していただくこと、現場の現状把握に努めていただくことをお願いいたします。そして軽々に判断し、実力行使するのではなく、何よりも子どもたちのために、必要な予算措置をお願いしたいと切に要望いたしまして、私の質問を終わります。


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