2008年6月議会 討論

■賛成討論

市民派ネット 中西とも子

◎議員提出議案第5号 後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書

市民派ネットの中西智子です。通告外ですが、議員提出議案第5号 後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書案に賛成討論します。

後期高齢者医療制度が4月に実施されてから、国民的な怒りと不安が爆発しています。また制度の凍結・中止・撤回を求める意見書を採択した自治体は、報道によると5月段階で既に580を超えたと伝えられています。また、参議院では民主党、共産党、社民党、国民新党の野党4党が「後期高齢者医療」廃止法案を提出し、可決されていますが、衆議院では残念ながら継続となっています。

私は再三、議会の場で申し上げてまいりましたが、地域住民の尊厳と命と暮らしに直接関わるこの制度に対して、地方自治体の議員も毅然とした意思表示と行動が求められていると考えます。憲法92条の精神で「悪法は正して」いくことこそ我々自治体議員に課せられたミッションではないでしょうか。

「法律で決まったことだから」あるいは「きちんと対案が示せないかぎりは意見書を出すべきではない」というのでは、結局自治体議員として何の意思表示も行なわず黙認し、すなわちこの「後期高齢者医療制度を認める」ということになってしまいます。

私は、我々地方議員は地域住民の願いや生活実態に合わない法律は国にしっかり働きかけて改善しなければならないと考えています。

このたび、政府も低所得者の負担を軽減するなど運用面での改善案を提案していますが、そもそもの問題点はこの制度が根本的に「高齢者の医療を確保しない」というところにあるのです。

後期高齢者医療制度は「老人保険法」にあった「健康の維持」がなくなり、代わって「医療費の適正化」が盛り込まれました。取立てはしっかり行い、サービスは抑制するという仕組みになっています。

また、一連の「医療制度改定」のなかで、後期高齢者医療制度がどのように位置づけられ、問題となってくるかも指摘しておかねばなりません。

そのひとつに「担当医制度」の導入問題があります。これについては医師からも「今までどおりの治療が受けられない」「高齢者の病気の特性がわかっていない」との強い批判があります。また、「療養病床」については2年前28万床あったものを2012年までに6割削減の15万床にする方針となっています。4年以上療養病床にいられない、高齢者の受け入れ先が問題となります。老人保健施設は医療機関ではないため、医療を必要とする人は断らざるを得ない状況となっていますし、また診療報酬の削減で療養型施設では医療スタッフの維持も厳しくなっています。療養病床にいられなくなった人の受け皿が乏しく、またかろうじて受け入れてもらったとしても、スタッフが低い診療報酬で対応に追われるために、人手不足となり、本来はリハビリをしっかり行って在宅へ移り、スタッフが訪問看護で在宅を支援するというサイクルがかなわなくなるという、施設本来の機能を果たせないという事態を引き起こしています。高齢者が健康を取り戻すための場がなくなっていく、また、診療報酬の削減で、診療機関の存続も困難となる例もあり、現場では医療崩壊がはじまろうとしています。

厚生労働省は老人医療費をGDPに比例させるという策をとっていますが、このような現状を無視した机上の空論で、医療費抑制を推進しようとするところに所詮、無理があるのです。

政府は、世間の批判を受けて、低所得者の保険料を減免する負担軽減策をまとめましたが、内容は年金収入が80万円以下の世帯については、一律に支払うことになっている「均等割」部分を、2009年度から9割削減し、中所得者の一部は所得に応じて50%程度軽減するというものです。そして経過措置として10月から半年間だけ、現在7割軽減の措置を受けている加入者約470万人の保険料徴収の凍結を打ち出しています。

また不評だった年金からの保険料天引きの免除対象者を増やして、口座振替による納付を認めることなどが盛り込まれています。しかしこれらは法改正などの抜本的な見直しではありません。制度の根本的な問題はそのままです。保険料は2年毎に値上げすることができるため、一時的に下がったとしても、国民の怒りをほんの少しかわしただけに過ぎません。この運用見直し案はタイミング的には沖縄県議選の直前にまとめられ、とりあえず選挙のために対応策を打ち出したという印象が強く、このたびの措置で2008年度は約560億円、2009年度で約330億円の財源が必要となる見通しであると試算されているにもかかわらず、一方で政府は社会保障費の伸びを毎年2,200億円圧縮する方針を堅持しているため整合性のない場当たり的な策であるといえます。

高齢化が進み、医療費の増加は避けられない課題です。現役世代には非正規雇用が3割を占める労働実態や所得格差が歴然とあるなかで、公的医療保険の負担のあり方や医療制度がどうあるべきか、一旦リセットして国民的議論を尽くすためにもこの後期高齢者医療制度の廃止は当然であると考えます。

以上、私の賛成討論といたします。


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