2008年2月議会 討論

■反対討論

市民派ネット 中西とも子

◎第25号議案箕面市後期高齢者医療に関する条例制定の件について

後期高齢者医療制度は、都道府県の区域ごとに、市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が事務を行うことと定められており、大阪府においては「大阪府後期高齢者医療広域連合」が事務を行うことになっています。広域連合は被保険者の資格認定・管理、被保険者証の交付、保険料の賦課、医療給付の事務を行い、また市町村では、保険料の徴収と届出・申請受付等の窓口事務を行うとなっており、このたびの25号議案は、この市町村事務についての規定を定めたものです。

本年4月から導入される後期高齢者医療制度は、さまざまな問題や矛盾をはらんでいます。大阪府後期高齢者医療広域連合のホームページでは、この制度がつくられた意味について「高齢者が心身の特性や生活態度などに即した医療を安心して受けられるように創設された」と掲載されています。高齢者の特性や生活に即した医療とはどのようなものを指すのか、大阪府の広域連合事務局へ問い合わせましたが、明快なお答えはいただけませんでした。

この医療制度の財源構成は、後期高齢者が10%、各医療保険者が40%、国が33.3%、府と市町村がそれぞれ8.3%という割合になっており、今回新たにゼロ歳から39歳の人たちも「後期高齢者医療の支援金」を負担することになっています。

保険料の負担については個人単位制で、広域連合内は均一の保険料となっており、大阪府の場合、平均的な年金所得208万円の1人世帯の場合では、月額保険料は7930円で、これは全国平均を上回っています。さらにこの制度は保険料の見直しが2年後ごとであるため、将来的な負担額についてはさらに、かなり厳しいものになることが予想されます。

保険料の軽減措置については、低所得者の世帯の所得水準によって2割・5割・7割の段階的に設定されています。

また、被用者保険の扶養家族であった高齢者については、新たに保険料がかかりますが、後期高齢者医療保険に加入しなければならない年齢になったときから2年間は激変緩和を図るための措置が講じられることになっています。さらに2008年度の4月から9月までの6ヶ月間やその後の6ヶ月間については特例として軽減措置が設けられました。

しかし、これは新制度への移行における単なる激変緩和措置であって、被保険者の不満や批判をかわすためである、とも受け取れます。

保険料の徴収については、年金額が年18万円以上の場合、医療保険料・介護保険料を合わせて年金額の2分の1以内であれば年金からの天引きとなります。

また、資格証明書の発行は月額1万5千円以内の低年金や無年金の高齢者も対象となっているため、非情な医療現場となることが予想されます。

以上がこの制度の概要ですが、介護保険料と合わせると月額1万円を超える負担となり、しかも2年後ごとに保険料が上がる仕組みになっているため、高齢者の生活を圧迫するものとなります。保険料は個人単位で決定されるのに、減免は世帯の所得で実施されます。例えば月額1万円の年金受給者で子の扶養家族の場合、子の所得が平均所得の420万円のときは軽減措置の対象とならず、均等割り全額の47,415円を納めなければなりません。介護保険と合わせると月額1万5千円のうち、およそ半分程度しか手元に残らない計算になります。結局、さまざまな負担が家族にも及ぶことになるでしょう。

4月から現役世代が支払う保険料に内訳明細が記載されることになる、とのことです。「一般保険料」「特定保険料」という給与明細の数字を見ながら漏れるため息が、やがて、高齢者へのいたわりではなく、うとましく思う感情が芽生えないとも限りません。現役世代と高齢者が対立構造に置かれるという時代がやってくるのかと、心が凍りつく思いです。また高齢者も医療機関へ向かうことをためらって手遅れになったり、症状が重くなってしまうことも懸念されます。早期治療が後退すれば、返って医療費がかさむことにもつながります。

少子高齢化社会においては、増え続ける医療費を抑制し、財源的に高齢者みずからが保険料を納め、あわせて現役世代も支援して、国・府・市町村で負担するというのがこの制度の趣旨である、と原課の説明がありました。しかし、日本の医療費予算はOECD諸国と比べ、はるかに低い割合となっています。このことの見直しを抜きにして、やみくもに医療費抑制策を唱えるのは土台、無理があるのではないでしょうか。

また、そもそも「広域連合」というものは1995年から制度化され、地方分権の推進という観点から一部事務組合制度と違い、権限の拡大がはかられたものです。長と議員の直接選挙制度の導入や条例の制定改廃、広域連合の事務を変更することに対して直接請求ができるなど、本来は住民の意思がもっと反映できるようになっているものです。しかし、この後期高齢者広域連合は、このような広域連合創設の趣旨とは異なり、国が一方的に決めた制度であり、府下43市町村の中からたった20名の議員しか選出されず、陳情・請願などは、紹介議員を経由しなければ議会に諮られない仕組みとなっています。

これでは住民の意思が十分反映されるはずがないし、実際、私は大阪府の広域連合議会を何度か傍聴しましたが、残念ながら一部の議員を除いては、事務局が用意した議案を承認するだけで、厳しい傍聴制限もあって議会としての本来の機能がしっかり果たせているものではありませんでした。

新聞の投書欄には連日のように、当事者の怒りと嘆きが紹介されています。

この第25号議案は、制度の実施に伴う自治体事務について規定したものですが、そもそもその内容については広域連合という特別地方公共団体が運営主体であるため、われわれ自治体議員はこの制度に基づく市の条例に対して、修正議案が出せませんし、また、このままこの制度が劇的に改善されるという見通しもありません。

国政においては2月28日、野党4党が後期高齢医療制度の廃止や70歳から74歳の窓口負担などの廃止法案を衆院に共同提出し、3月5日には、国会内で「後期高齢者医療制度廃止を求める緊急集会」が行なわれました。このような動きがあるなかで、我々自治体議員もこの制度に対する意思表示が必要であると考えます。

さきほどの20号議案「箕面市特別会計条例改正の件」については、後期高齢者医療事業の開始に伴う特別会計の設置のほかに萱野中央土地区画事業の完了に伴う特別会計の廃止も含まれていたため、反対いたしませんでした。

後期高齢者医療制度は、高齢者の尊厳と生活と命にかかわる問題であり、家族や若い世代をも巻き込む非情な医療制度であるとしか言いようがありません。また、住民の声が届きにくい組織運営のもとで進められていく制度です。このようななかで、やはり市民の立場に立ってこの制度の廃止を求めていかねばならないとの思いから、この条例案に反対とさせていただき、私の討論を終えます。


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