2006年12月議会 討論
■反対討論
市民元気クラブ 中西とも子
第108号議案 「大阪府後期高齢者医療広域連合の設置に関する協議の件」に反対の立場で討論を行います。
この議案は後期高齢者医療広域連合の設置に向けて規約を制定し、市町村間で協議するというものですが、私が何故この議案に賛成できないかを以下に述べたいと思います。
まず、第一にこの制度が高齢者のさらなる負担増となる問題です。国は老人医療費の抑制策として今年6月に法律を改訂し「高齢者患者負担の見直し」「高齢者医療制度の創設」「保険者の再編・統合」という「制度変更」に着手することになりました。このたびの「後期高齢者医療制度」とは2008年度から、現在の老人保険制度および退職者医療制度を廃止して、75歳以上および65歳以上の寝たきりの高齢者がすべて加入する新たな医療保険制度を創設する、というものです。
これまで扶養家族として保険料負担がなかった高齢者も新たな医療組合への加入を余儀なくされ、保険料を支払わなくてはなりません。保険料の徴収は原則、年金からの天引きとなっており、介護保険料の天引きとダブルで生活を圧迫します。また保険料が支払えないと保険者証から資格証明書となり、病院にかかることさえ躊躇する事態が想定されます。要するに「お金のない高齢者は医療が受けられない」「医療費を捻出するために食費を抑制し、さらに健康状態が悪化する」という悪循環で、病気の早期発見・早期治療とならずに、はからずも医療費抑制につながらないという問題が想定でき、憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」にも反することにもなってしまいます。
さらに厚生労働省は保険料の平均月額を約6,200円と試算していますが、大阪府ではこの額を上まわるであろうと予想されているものの、未だ試算は公表されていない有様ですし、大阪府全体の国保会計の赤字総額についても推測の域を出ていないという状況です。
第二に、「広域連合」に関する問題です。広域連合は1995年から施行され、複数の自治体が行政サービスの一部を共同で担うことを目的として設置する特別地方公共団体の一つです。地方自治の強化の一環として、国からの権限委譲の受入れ体制を整備するために創設されたものです。広域連合の事務は地方自治法上の自治事務にあたるため、本来は自治体が主体的に組織するものであり、「住民」の存在を前提とした制度であるので、長と議員の直接選挙制度が導入できるほか、条例の制定改廃等の直接請求が可能で、住民の意思をより反映できるようになっているものなのです。
しかしこのたびの後期高齢者医療広域連合は、法律で自治体に設置を義務付けており「国の決定に黙って従う」というのは本来の広域連合の趣旨とは矛盾し地方分権・地方自治の流れに大きく逆行します。また議案であるにもかかわらず、修正議案を提案することもできないなど矛盾があります。
国の決定であり、基礎自治体ではどうしようもない、として「問題はあるが止む無し」という判断もあるかも知れません。また、本年6月の法改訂から来年4月には広域連合を発足し、2008年4月からの実施という非常に短い期間での整備を強いられるため、現場の悲鳴や苦労が目に浮かびます。このような形で地方に押し付ける国のやり方には納得しかねるものです。
私は今ここでこのような地方自治破壊ともいえる構図を認めてしまえば、ますます歯止めが利かなくなるのではないか、と危惧します。
第三に広域連合の規約(案)に見られる組織・運営に関する問題です。
この大阪府広域連合には、43の自治体が加盟することになりますが、議決機関である広域連合議会の議員はわずか20名です。選出方法も間接選挙であり、また、三重県や千葉県、東京都など執行機関との調整機能をもつ運営検討委員会や協議会などを設置して各市町村の意見が吸収できる体制を整備しているところもあるのですが、残念ながら大阪府の広域連合においては、情報提供・説明責任が果たせるためのフレームにはなっていません。民生常任委員会での質疑において、担当部局からは今後整備をはかればよいのでは、という説明をいただきましたが、現在、その道筋が不透明である以上、安易な期待は禁物であると言わざるをえないのです。
また、保険料設定などは運営主体である広域連合で決定しますが、この保険料は2年おきに見直されることになっています。また徴収は各市町村で実施することになっています。従来ならば各自治体の実情に即した弾力的な運用が可能であったものが、広域連合になったために、市独自の取り組みができなくなる可能性が極めて高く、現場職員に苦渋を強いることにもなりかねません。
全市町村参加が前提の広域連合であるため、1市でも議会で否決されれば、この規約での成立は成りません。反対は必ずしも「身勝手」ではなく、勇気を持って問題提起とし、再度規約を練り直すべきではないか、との思いからあえてこの議案に反対とし、私の討論を終わります。
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