2010年2月議会 討論

市民派ネット 中西とも子

○討論

◎第1号議案 2010年度箕面市一般会計予算に反対

市民派ネットの中西智子です。

ただいま提案された第1号議案「2010年度箕面市一般会計予算」原案に反対し、北川照子議員外3名提案の修正案に賛成の立場から討論します。

まず、原案に対する反対意見から述べます。

1点目に当初予算に貫かれている市の政策理念について、です。

代表質問でも述べましたが、新自由主義にもとづく効率優先、規制緩和の推進は、格差を拡大させました。行政は官製ワーキングプアを生み出し、貧困の連鎖は若者や子どもたちから夢や希望を奪っています。

国立社会保障・人口問題研究所は20年後の2030年には70歳以上の一人暮らしの高齢者が33都道府県で40%を超えるというショッキングな推計を公表しています。

「これから高齢者が増えるからきりがない。サービスを抑えよう」というのでは、現役世代においても将来不安が増すばかりです。また、大学生の就職内定率は2月1日時点で80%であり、これは前年同期を6.3ポイント下回り、文科省と厚労省の調査結果では「氷河期」を抜いて過去最悪であることが、明らかになっています。危機を乗り越え、希望に向けたビジョンをどのように描くのかが、今、重要な課題であると考えます。住民税の落ち込みからもわかるように、総体として、市民の可処分所得が激減しています。市民の暮らしをいかに回復させるのか、地域でコミュニティを再生し、ともに生きる社会の構築にむけて、公共サービスの再構築が必要であると考えます。

昨年7月に施行された「公共サービス基本法」では、あらゆる分野で格差が拡大する中、国民生活の安心・安全を取り戻すためにも国民の権利として公共サービスが実施されることが掲げられています。国と地方自治体の責務を定めており、自治体は公共サービスを提供しなければならない責務があるとうたっています。

もちろん、地方自治体の財源には限りがありますが、いまやインフラやセーフティネットなど人に対するサービスを提供するという対人社会サービスが求められています。人に投資することで自立できる市民を増やし、あらたなソフト産業やまちづくりのための担い手を支援しなければならないからです

しかし、箕面市においては「ゼロ試案」に見られるように、低中所得者へのサービスを重点的に行うのではなく、サービスの削減が来年度はさらに際立っています

市営葬儀の補助金は、低所得者に対しても打ち切りとなり、経済的に厳しい家庭の子どもたちへの就学援助も削減・廃止されました。対人社会サービスとしての社会的セーフティネットは、今のような時代であるからこそ、より重要であると考えるのですが、サイレントマジョリティーに対する情け容赦のない市の対応は、なんとも冷たいものであり、市民の生活実態を無視して目先の財源確保に走っているとしか思えません。

また、保育料も可処分所得が減少傾向にあるなかでは値上げすべきではないと考えますし、何よりも市長の目玉公約である「子育てしやすさ日本一」に反しています。まさに理念なき政策のオンパレードです。

国民健康保険料は2009年度に値上げされ、来年度の値上げ予定については低所得者層はもとより、とりわけ中間所得者の生活を圧迫するものになっています。医療制度や国保の制度矛盾などの要因で、国保会計は赤字となり、国による是正策が早急に講じられるべきであることはいうまでもありません。高額所得者の賦課限度額の引き上げは仕方がないと考えますが、低中所得者の負担増については、国による制度見直しが行われるまでは、自治体ができる限り補っていかねばならないと考えます。とくに、国保加入者は国民年金加入者である場合があり、将来的な生活設計にも備えなくてはならないという事情もあり、生活実態に配慮した行政支援が必要であると考えます。

全国学力・学習状況調査は分析結果による取り組みが検証されるまで、参加の必要なないと考えます。全国テストや体力の問題に関して、やはり数字にこだわるあまり、平均値を上げることにとらわれているように見受けられます。個々の子どもたちにとって何が最適なのか、どのように学習や生活環境が改善されればよいのか、一人ひとりの子どもにとって個性を引き出す支援・アドバイスや、マイノリティが尊重される教育現場でなければならないと考えますが、現状ではまだまだ問題を抱えており、遺憾に思います。

2点目は、市長の公約と財源配分の優先順位についてです。

今日的な社会・経済情勢のなかで、行政が限られた財源のなかで何を優先させるのかが問われています。これまで述べたように、市民が自立するために必要なサービスをバッサリ削る一方で、彩都開発を推進するための国文4号線の新設や北大阪急行線の延伸計画を推進するための1億円基金など、不要不急の開発には惜しみなく投資するというとてもバランスの悪い配分であると考えます。すべての開発がいけないとは思いませんが、まずは市民の暮らしが最優先されるべきであると考えます。

人への投資は将来のためのものでもあります。これからの時代は、知識集約型産業やサービス産業など、ソフト産業の可能性について語られることが多くなってきました。箕面市においても介護や環境分野の需要が期待されるため、市民の自立や人材育成のために投資すべきであると考えます。

3点目は、トップダウン式の市長の統治スタイルや情報提供の後退についてです。

結論ありきで施策が決定されていることです。スピード感はあるが、位置づけや内容はあとづけで決定するため中身が追いつかない、という事業が散見されます。このような手法は、意思形成過程がいびつになるだけではなく、目的に沿った予算設定にならず、さほど必要でないものを無理やり割り振る、という旧来型のお金の使い方になってしまい、無駄が生じます。

また本来「地域主権」とは上から下へのピラミッド型のまちづくりではなく、地域に暮らす人々が互いに手をつなぐ輪のようなコミュニティの中から湧き上る下から上への課題解決を行政が支援していくという方式である、と考えています。

国と地方の上下関係で動いてきた「古い公共」を分権社会に塗り替えていくように、行政と市民の関係も対等でなければならいと考えます。協働とは行政と市民が対等なパートナーとして連携し、協力してまちづくりを進めることであるはずですが、そのためには、市民への情報提供は不可欠です。たとえば滝道の川床事業は地域住民が知らないうちに非公開で検討が進められたため、市民からの苦情も多数寄せられており、非常に残念です。

以上、個々の事業には賛同できるものもありますが、総体として、当初予算に見られる市長の理念・政策の優先度・統治スタイルは、時代に逆行するものであり、一般会計予算原案には反対いたします。

次に北川照子ほか3名提出の修正案に対する賛成意見を述べます。

修正案は、ハード整備よりもソフト重視型の政策転換を促す内容となっており、公共サービスの再構築を念頭に組み替えられたものです。厳しい時代を乗り切るためには、まず何よりも人が元気になる処方箋が必要です。とりわけ、核家族化がいちだんと進むなかでは、地域社会の絆を基に、お互いが負担し合える仕組みづくりが重要であると考えます。市民の生活実態に応じた対人社会サービスを充実させることにより「安心」を生むだけでなく、自立した市民を増やすことは、引いては将来的な市の財政出動を抑制させることにもつながります

神名神高速道路については、第二京阪道路の開通により京都―大阪間の渋滞緩和や救急医療搬送、災害時輸送が可能となり、京滋バイパス、近畿自動車道とも接続し、名神高速道路へもアクセスできるため、「渋滞解消」が目的であるならば、必要性は低いと考えられます。名神高速道路は現在でも特別な休日以外にはさほど渋滞はありません。あらたな高速道路を造れば、また車の量を増やします。さらに新名神は巨額を投入して箕面の山を削り、自然破壊にもつながるものであるため、反対の意思表示として新名神高速道路建設の関連経費が含まれた旅費を削減した修正案に賛同するものです。

なお、彩都開発を促進する国文4号線の新設については、さきほどの森岡議員の討論と同様であるため、割愛いたします。

さらに水道減免のための一般会計からの繰り出し分についてですが、現在児童扶養手当を受給している母子家庭や障碍者への減免措置が廃止されるため、これを補おうとするものです。まもなく水道料金の値下げが予定されていますが、これは水道料金の約5%程度であるといわれており、金額にして平均で年間約2,300円程度、月額では約190円程度の減額にあたります。府営水道の値下げ分を還元したとしても低所得者の負担がこれまでどおり軽減されるほどではありません。建設水道常任委員会では、「福祉は個人給付なので(公共料金には)なじまない」とする市の見解が述べられましたが、これはとんでもない暴論であると考えます。さきほどから述べているとおり、対人社会サービスによる現物給付は、低所得者にとっては「安全」のためのセーフティネットです。今後、減免対象者については、準生活保護世帯にするなど、検討の必要性を感じていますが、ともかく減免措置が、水道事業会計の中で不可能であるならば、市が補助すべきであると考えており、修正案の趣旨に賛成します。

次に、市単費の私立幼稚園児童保護者補助金の減額についてですが、国からの補助金は低所得者には手厚く、所得階層が上がるにつれて補助額が少なくなっているのに対し、市の補助金は「補完する」ということで、680万円以上の高額所得者に手厚く、所得階層が下がるにつれて補助額も下がる、という性格のものです。今回の修正案で高額所得者のうち1,000万円以上の所得世帯に対して、補助額12万円のうち、25%にあたる3万円をカットするという内容です。この補助金はゼロ試案では2011年度には50%カット、2012年からは100%カットにすると提案されていますが、2011年度からの実施にあたっては、一定の高額所得者のみを対象にすべきであるだということも申し添えておきたいと思います。

さらに、箕面まつりについては財政に見合った身の丈にあった手作りのおまつりを市民の手で構築すればよいため、減額には賛成です。他市との比較においても、決して少ない額ではなく、1年間を通して専従の職員が複数、常駐している市民まつりの事務局というのは大変めずらしく、繰越金のほかに基金としてプールしているお金もあるため、現状の補助金額と運営形態では、逆に市民の同意も得られないものであると考えます。今後は工夫をこらし、まちづくりのためのおまつりにしていただきたいと思います。

以上、第1号議案「2010年度一般会計予算」について原案に反対し、北川照子議員ほか3名が提出した修正案への賛成討論といたします。

○反対討論

◎議員提出議案第6号 関西における空港の在り方と年将来像について

議員提出議案第6号 「関西における空港の在り方と年将来像について」と題した決議について、通告外ではありますが、今の意見を伺い、私も意見表明をさせていただきたいと思いますので、簡潔に反対の立場で討論します。

この意見書は、提案者から我々に最初の文案が示され、提案に賛同するか否かについては調整中というタイミングにもかかわらず、その日の夕刊紙上で、内容や見通しが公表されるという異例の手続きになったという経緯があります。箕面市議会の慣例からは外れるものです。しかも市民派ネットとして最終的な内容を知ることができたのは、23日の幹事長会議が始まる直前です。幹事長会議の席上、事前に示されていた決議文の内容が変更されたことについては、当初、提案者からは説明がなく、こちらから説明を求めたときにも「2箇所の変更」とのことでしたが、後ほど確認したら4箇所ほど訂正・削除・加筆が加えられていました。「どうせ、反対するだろうから、説明などいらない」とでも思われたのでしょうか。箕面市議会として掲げる決議文はできるかぎり丁寧に提案・議論を重ねて全会一致をめざして調整されるべきものであったと思います。数さえカウントできれば、他の会派・議員への説明が軽視されるのであれば、箕面市議会では民主主義が崩壊していると言わざるをえず、大変残念に思います。

このたびの決議提案は、去る2月22日に開催された「橋下知事と箕面市議会の『空港問題に関する』意見交換会」において、知事から「伊丹廃港決議」の要請を受け、さらに倉田市長の「北急に関して……知事に魂を売ったら府が全額出していただけるというぐらいに僕は受け止めましたので」という発言に表れているように、市長の意向にも連携して、議会もまた「魂を売る」決意を形にしたものであると私は受け止めています

さて、箕面市議会は昨年6月に「大阪国際空港の利便性確保に関する意見書」が全会一致で可決されています。1年もたたないうちに、前言を翻す決議をあげるというなら、市民に対しても相応の説明責任と合理性の伴う論拠が必要です。しかし、この決議文面からは、なぜ「中長期的に伊丹空港を廃港する」ことが関西・大阪圏の活性化につながるのか、昨年の決議から180度方向転換に至ったのか、経緯がまったく説明されていません。昨年の決議は誤っていたのでしょうか?それともこの9ヶ月で劇的な変化が起こったのでしょうか?議会に携わるものとして、このような無責任な決議には同意できません。

また、私は知事との意見交換会の場でも申しましたが、北大阪急行線延伸という課題と伊丹空港を今後どうするかという課題は、まったく別次元であるため、混同せず、かつ取引の材料にすべきではないと考えます。自分の市の事業を有利に進めるために、他人の家に上がりこんで「ここを立ち退け」「そうすれば、こちらはご褒美が貰えるのだ」と言わんばかりのご都合主義の姿勢は破廉恥であり、箕面市議会の将来世代にも汚点を残すことになってしまいます。なによりも品位を重んじてきた伝統ある箕面市議会にあるまじき決議は、極めて遺憾です。

先日の3月5日、伊丹市において「大阪国際空港の活性化を考える集い」が開催されました。関西3空港の最大活用法や伊丹空港の今後の可能性について、詳細な資料とともに説明・提起が行われ、最後は関西の自治体が力を合わせて3空港の活性化と経済の活性化、まちづくりを目指そう、今後も検討を進めて行こう、という前向きな内容でした。そこでは廃港をうたう自治体の長を非難することもなく、冷静で大人な姿勢が印象的でした。説明資料の中には橋下知事が提供した資料内容を覆すものが多々あり、どちらの資料もきちんと精査する必要性を痛感しました。

なお、新聞報道を読んだ市民の方々からは、「伊丹廃港案は将来に禍根を残す」「議会も目先にとらわれず将来を見据えた事をおこなってほしい」という意見が寄せられていることも申し上げておきたいと思います。

私は伊丹の廃港ありきではなく、学識経験者も交えながら、様々な可能性について科学的な根拠に基づく真摯な議論を開始すべきであると考えます。箕面市の住民の利便性をはかることは基礎自治体としては大事な要素です。この市民の利便性が削られることなく、別の方法で確保できるのであれば、その方策についても丁寧に市民合意がはかられるよう説明が必要です。これからの高齢化社会において、どのような交通体系が求められるのかという視座も入れて、また大阪や関西の活性化について有機的に発展させる方策をしっかり議論していかねばなりません。現時点で「伊丹廃港」を結論付けるのは早計であると考えます。

以上、この決議の提案に至る経緯、提案の目的と趣旨、提案内容のいずれにおいても賛成できる要素がないため、この決議には反対します。箕面市議会の良識ある決断を訴えまして、私の討論といたします。


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