2007年2月議会 討論

■賛成討論

市民元気クラブ 中西とも子

◎議員提出議案 第2号 柳沢厚労大臣の発言に抗議し、罷免を求める意見書

議員提出議案 第2号 柳沢厚労大臣の発言に抗議し、罷免を求める意見書に賛成の立場で討論します。

まず、柳沢厚労大臣の一連の発言にこめられた問題性について、明確にしておく必要があります。

1点目に、女性は「産む機械」と人間を機械に例え、生殖機能を「装置」と言い換えるのは出産という行為をあたかも「生産ロボット」的な扱いとして例えたものであり、生命の尊厳・個人の尊重という人権意識が著しく欠落した発想です。これはひいては女性男性を問わず、労働者を「働く機械」として扱うこととも重なります。

2点目に、同大臣は謝罪した数日後の少子化対策に関する発言で「若い人たちは結婚をしたい、子どもも2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいる」と語りました。さきの発言と併せて根本にある思想は「産むのがあたりまえ」「産まない女は役立たず」という女性蔑視・女性差別観に基づいています。発言には産みたくても産めない女性、不妊治療に苦しむ女性に対する支援や配慮も見えません。また、これは未婚・非婚・事実婚、あるいは産まないことを選択した女性や性的マイノリティに対して多様な生き方のひとつとして尊重する視点がなく、結婚しない、出産しないのは「不健全」であるかの固定観念に基づいています。このような視点による少子化対策はこれまで築きあげてきた男女協働参画理念を著しく後退させるものです。

産む・産まないという性と生殖に関わる決定は当事者が決めることであり、国家や他者が強制的に迫るものではありません。

1994年にカイロで開かれた大規模な政府間会議である「国際人口・開発会議」(ICPD)において「すべてのカップルと個人が、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを自由に決定する基本的権利」いわゆるリプロダクティブ・ヘルス、リプロダクティブ・ライツが採択されました。この20ヵ年の「ICPD行動計画」は、参加した179カ国で合意されており、女性の人権のひとつとしていまや国際的な認識となっています。

さらに1995年に開催された世界女性会議・通称北京会議で採択された行動要領についても1995年度版の「厚生白書」のなかで「厚生省としては,行動綱領の中でもリプロダクティブ・ヘルスに係る部分は特に重要と認識しており,リプロダクティブ・ヘルスを確保するためには女性に対する教育や家族計画,カウンセリング等の普及が重要である。今後,国内施策の充実とともに国際協力での指導的役割を果たしていくことが求められている。」と記しています。今回の柳沢厚労大臣の発言はこのようなわが国の方針とも矛盾するもので、担当大臣としてあるまじき見識であると言わざるをえません。

3点目に「ひとり頭で頑張ってもらう」という発言とあわせて、子を産み育てる行為を国家経済や社会保障制度を維持するための道具という観点のみに立脚し、「国家のための個人」という考えに基くものであると考えられます。これらは裏返せば、生産能力がない人間には価値がないとする思想であるため、女性のみならず高齢者や障がい者に対する価値観として反映される危険性をもはらんでいます。

4点目に少子化対策には出産・子育てができる環境、すなわち労働時間・賃金保証・保育所の充実・経済支援・相談体制の充実などを整備することと、生まれてきた子どもに平等の機会があたえられ、健やかに育つ権利を保障していくことが不可欠です。このような対策を抜きにして、少子化問題を個人の問題に転嫁するのは問題の本質を見据えていない証拠であり、今後の施策に大いに不安を覚えます。

また、柳沢厚労大臣は謝罪はすれども発言の何が問題であるかについては一切言及せず、国民に対し説明責任を果たしえていません。

自治体においてはこの2月議会で小金井市議会や長崎市議会・県議会をはじめ抗議や辞任を求める意見書が採択されています。また多数の外国メディアもこの問題を配信し、注目しています。

先日、高知市議がこの件を批判し抗議する野党議員をさして「子どもを産めない連中を引き連れて」と発言し、またまた顰しゅくをかいましたが、このような発言が相次ぐ背景には、やはり問題の所在がきちんと整理されず、何を言っても「謝ればしまい」と根本的解決を怠るところにあると思います。

単なる発言のことば尻をとらえての批判ではなく、このたびの問題を切開し、軌道修正しようと試みる姿勢がみうけられず、国会議員として、また厚生労働大臣としての資質に欠けるとともに、これを擁護する政府与党や総理の任命責任も厳しく問われると考えます。

以上、発言の背景にある問題性と柳澤厚労大臣がすでにその職責を全うするに値しないことを明確にし、私の賛成討論といたします。


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